グランドホテル形式の小説だ。先日見たバカリズム(敢えて彼の、と書く)の傑作『ウエディング・ハイ』同様に。だけど、微妙な点であれは傑作、これは駄作になっている。ほんとなら読んだことを忘れて、無視してもいいところだが、やはり少し気になってしまい、書き始める。この作品の失敗はあまりにGにこだわり過ぎたことにあるのではないか。アイデアはいいけど、それに足を掬われた。
有名ホテルにGが出る。そこから始まる従業員、お客さんの騒動が描かれる。G、それはきっかけに過ぎない。あくまでもこれはバカでかわいい人間たちのドタバタを描くことが大切。なのにGに気を取られ、本末転倒してしまった。あげくはお話自体まで破綻してしまう。
もちろんGはゴキブリである。まさかのゴキが一流ホテルを掻き回す。アイデアは悪くないけど、展開のさせ方が悪い。いくらなんでもやりすぎた。リアリティのないドタバタは笑えないし、醒める。調子に乗りすぎてGネタが暴走。収まりがつかなくなって自滅というパターン。群像劇で複数の視点から1日の騒動を描くというパターンを生かしきれないまま、失速してしまった。こういう企画物は難しい。