
こんなにも重くて暗い。だけど、そこから目が離せない。こんな日常がある。貧困外国人がたくさん暮らす団地。そこで暮らしている中学生の女の子、桐乃。だから教室には外国人の子どもたちもたくさん混じる。桐乃はここから抜け出したい。早く高校に行き、バイトしてここから遠くの外国人がいない大学に行く。ここから出て行く。
同級生の日本で生まれたベトナム人ヒュウ。満足に日本語を話せない母とふたり暮らし。母はまともに家に帰って来ない。だからほぼひとり。給食費も払えないから、給食は食べない。それだけが彼の矜持。そして桐乃の母、里穂。パートで働きながらボランティアで困っている外国人たちの援助をしている。家族より外国人たちの面倒ばかりで家庭崩壊している。
この3人の春から夏にかけての日々が描かれていく長編小説。読みながらずっと胸が苦しくて読むことが困難になる。投げ出したい。わざわざこんなツラい小説を読みたくない。だけど読んでしまう。この先彼らはどうなってしまうのかが気になる。安易な幸せはやって来ない。たとえこれが小説だといっても。それくらい厳しい現実が描かれている。目を背けたらいい。自分には関係ない話だと。だけど出来ない。
これはそんな小説なのだ。そしてこの困難を抱えて頑張って生きる人たちがいる。春から夏にかけての、中2、14歳のふたり。ふたりの母親も含めて、彼らの短い時間が描かれる。夏休みが終わり新学期が始まる。大きく状況が変わるわけではない。いや、変わらない。だけどふたりは前を向いて進み出す。困難は承知。逃げない。だいたい逃げ場なんてないから。