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映画・演劇のレビュー

未知座小劇場『独戯』

2006-10-27 21:28:21 | 演劇
 第一夜の『明月記』が、ひとりの女の内奥を描いたように、この作品は、同じようにひとりの男の内なる孤独を、思いきり、みみっちく情けない姿のまま、さらして見せてくれる作品になっている。

 この2本の芝居は、まるで合わせ鏡のようになっており、2本がそれぞれ、男と女を通して人間というものの姿を見せようとする。別々の2本の芝居がひとつになることで、人の営みの全容を示してみせるということだ。全体の構成も作り方も、よく見れば似ている。そして、どちらも、ラストに小柳ルミ子『お久しぶりね』の大音響の前で大雨を降らし、水浸しになりながら足を踏み鳴らすシーンを持ってくる。この圧倒的な迫力。それを見るだけでもこの芝居を見る意味はある。だが、表面的には2本の芝居のアプローチは全然違う。そこが面白い。

 時折旬は、4畳半の1人暮らしの中年男を自嘲的に演じており、とてもかわいい。闇黒光は女性に対してはあんなに優しかったのに男性にはとても厳しい(ように見せる)。『明月記』では見事なまでにスタイリッシュでスマートな舞台で2人の女たちを美しくみせたのとは、対照的に今回は男を突き放して何もない空間に置き去りにする。もちろんそれは、男である作者のテレであり、女には甘く自分には(男には)厳しいという当然のことなのだ。

 そんな中で時折旬がほぼ全編たった一人で延々語り続けるこの芝居を見るうちに、彼のかっこ悪いその姿に感動している自分に気付くことになる。風呂帰りの部屋で半裸になり、ワンカップを2杯一息にあおるシーンからスタートしてラストまで一気に駆け抜ける。そんな男という生き物の姿に泣かされる。

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