
「これはいったいなんなんだ!」と、その衝撃的な内容に驚かされた。これは昨年見た前田哲監督の映画『老後の資金がありません!』の原作者による最新刊である。あの映画のテイストを想像していただけに、この過激さには驚くしかない。僕は今回初めて彼女の小説を読んだのだが、もっとほのぼのした軽いタッチの作品かと思っていた。それだけに、このガンガン攻めてくる強烈な姿勢に圧倒された。妻の夫の対する恨み辛みが、これでもか、これでもかと情け容赦なく綴られていく。彼女の著作リストを調べて見ると『夫の墓には入りません』『四十歳、未婚出産』『定年オヤジ改造計画』『うちの子が結婚しないので』『うちの父が運転をやめません』『希望病棟』『代理母、はじめました』てな感じの作品が並ぶ。その作品名だけで充分内奥の想像がつくラインナップだ。
それにしてもここに出てくる男たちのえげつなさには驚かされる。この世の中はこんな男たちばかりなのか。戯画化されてあるわけではない。シリアスだ。目を覆いたくなる。外ヅラはいいけど、家に入るとこの始末。彼らの言い分は描かれない。というか、ほとんどここでは男の側は描かれない。あんな奴らのことを小説内で描くことすら汚らわしいというくらいの勢いなのだ。卑劣で愚劣で、一点の考慮できるような部分すら持ち合わせない。最低最悪の人種。
彼女たちは離婚に向けて全力で戦う。今まで虐げられてきた女たちの過酷な戦い。もちろん世の中の男がみんなこんな奴らばかりではない。でも、昭和30年代以前の男たちは大なり小なりこんな感じ。(僕は34年生まれでこの小説の登場人物と同世代だ)今は時代が変わってきたからさすがにここまであからさまではないけど、でも、今だってまだまだ男尊女卑はあからさまにある。
50代後半に差し掛かり、夫に対して毎日早く死んでくれと願い、呪い続ける。冗談ではない。本気で嫌っている。これはそんな女たちの物語。