
孤独を抱えて生きる「ひとりぼっち」たちの7つの短編集。大人から子供まで。それぞれがそれぞれの場所で寂しく生きている。その寂しさに気づかないまま、日々を過ごすもののいる。静かに息を潜めるようにして暮らしている。だけど、必ずしも彼らはひとりではない。知らないところや、気づかないままだけど、どこかで誰かが見守っていてくれる。そんなほっとする瞬間が描かれる。
依存するのではなく、強く生きるのでもなく、流されるままに、日々を過ごしていく。タイムマシンには乗れないから、過去にも未来にも行けない。でも、ここにいて、ひそかに生きていればいい。殺し屋にはなれない会社員の女性や、毎日博物館に行く少年。近所に住む姪のお迎えをする一人暮らしの叔母さん、夫に先立たれた40代の妻。ほか、ほか。みんな同じようにそんなふうにして生きている。今回の寺地はるなは、短編の中でそんな彼らの動静を短く切り取る。
いずれの作品も素敵だが最後を飾る『対岸の叔父』が素晴らしい。こういう叔父さんがいたなら、困るけど、嬉しい。自然体で自分を貫く。それをみんなが困ったなぁ、と思いつつもちゃんと受け入れる。山田洋次の寅さんもこの手のタイプだけど、あれはもっと生々しすぎるから、こちらのおじさんのほうがいい。
誰かがちゃんと支えてくれるから生きていける。ひとりではないことがどれだけ幸せなことか。たったひとりで生きていると思っていたけど、すぐそこに寄り添ってくれる人がいる。でも、その人に寄りかかることなく、ちゃんとひとりでも立っていられる。それくらいの強さは持ち合わせているから。これはそんな「小さな小説たち」である。