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映画・演劇のレビュー

『サブイボマスク』

2016-07-09 09:43:01 | 映画

いまどきこんな映画が劇場で公開されているなんて、驚きだ。しかも、一応東映系公開である。今年の東映映画は70年代に戻ったようなプログラムが、しかも何の告知もなくいきなり登場してきてびっくりすることばかり。先日の『全員、片思い』もそうだし、これもそう。公開から1週間で1日1回程度の上映になるくらいの不入り。

結構力を入れたはずの作品も、閑古鳥。6月公開の『探偵ミタライの事件簿 青籠の海』なんていうプログラムピクチャーとしかいいようにないものなのだけど、それなりに宣伝もしたはず。でも、まったく。すぐに消えた。映画自体は和泉聖治監督作品だし、なかなか楽しめる作品になっていただけに、残念だ。シリーズ化されたならよかったのに。でも、あれだけの不入りなら不可能だろう。玉木宏と広瀬アリスのコンビ(このふたりのデコボコぶりがとてもいい!)が謎の事件を解決していくという昔なら山盛りあったようなパターン。今ではTVの2時間ドラマとしてしか、作られないタイプの作品なのだが、さすがに2時間ドラマと映画では違う。

瀬戸内海を舞台にしたロケーションのすばらしさもあり、のんびりしたストーリー展開も悪くない。さすが職人監督である。『相棒』シリーズの映画化とは違うアプローチでそこもいい。(『相棒』はどうしても力が入ってしまうからね)こんなにもよく出来たプログラムピクチャーなのに、それゆえ黙殺される、というのが今の時代なのだろう。

そこで、『サブイボ』である。寂れた地方の商店街を再生させるために立ち上がる地元愛に燃える青年のお話。こんな題材で映画を作るなんて、その地点からもうアナクロの極み。どこまで、あり得ないことを本気でするか、に賭けるのだろうか。

そんなこんなで、粛々として映画を目撃したのだが、途中からさすがに、ないわぁ、と思う。これを2時間見るのは拷問に近い。だけど、作り手は一生懸命やっているし、きっとそのうち「何か」あるはず。そんなかすかな期待をして、見る。

でも、ないわぁ。最後まで同じ調子。ふざけているわけではない。大真面目。こんな人間もいるかも、とか、自嘲的なドラマに終わらせない覚悟は感じられないでもないけど、でも、これだけでは1本の映画として納得しない。6、70年代の大量生産時代ならまだ、笑えるけど、世知辛い今の時代である。これはないわぁ、ともう一度思う。  

だが、はたしてそうか。こんな時代だからこそ、これはこれで大事なことなのかもしれない。映画会社にはこういう映画を作るような企画の幅が必要なのだ。いろんなものがあるほうが豊かだ。それが許されるくらいに余裕があれば、きっとそこからもっといろんな可能性も開ける。そんな気がした。


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