高校の図書館を舞台にして、司書と出入りの書店員が、高校生たちと繰り広げる物語と知り、これは絶対読みたいと思った。しかも作者は大崎梢だ。大丈夫。と、思った。なのに、読み始めて躓く。ミステリー仕立ては仕方ないけど、(『小説推理』に連載された)あまりにお話がチャチでリアリティがない。ガッカリした。途中で辞めようと思ったが、我慢して最後まで読んだ。
それは正解だった。やめなくてよかった。3話目からようやく視点が定まってよくなってきたからだ。3話で描いたことが作者の書きたかったことだろう。ようやく学校図書館の存在意義に触れる。本を読むことが世界を広げていくことにつながる。そして図書館は休息の場所、逃げ場にもなる。
僕は学校(高校)は最高に素敵なアミューズメント施設だと思っていたし、それを実践してきた。40年(高校生だった3年を含めたら43年!)過ごして確信している。高校が大好きでずっとそこで暮らしていたいと思った。だけど、今年初めて本格的に高校を離れて、世界は高校だけではないと、当たり前のことを今実感している。
僕の雑談はどうでもいいけど、3話の進学校の話は痛い。僕は勉強はあまり好きではない。だから、学校で授業するのもあまり好きではなかった。在学時は受験勉強はしなかった。働き始めてからは仕事だから、受験指導はしたけど、それもあまり好きじゃない。ただ、生徒が必死になって勉強するのを応援するのは好きだし、彼らが希望する大学に入るように手助けするのは楽しいから一緒に受験も頑張った。
あっ! また、自分の話をしている。ついでにもう一つ。1年だけ頼まれて図書館館長をしたことがある。校務分掌の図書主任だ。僕は担任しかしたくないから嫌だったけど、校長から依頼されたから仕方なくした。(もちろん翌年は担任に戻ったけど)あの年、実は少し楽しかったこともある。自分の好きな本を自由に買ってもらい、たくさんの生徒たちに図書館を利用してもらえるようにちょっと頑張ってみた。
ダメだ。昔話ばかり書いてしまい、この本の話にはなかなかならない。
4話を読む。ダメだった。それは最後の5話も同じ。中途半端なミステリー仕立てがつまらない。高校の図書館という最高の空間で司書と生徒たちの本を介した交流を通して特別な時間を描く青春小説を期待してから、このチャチなミステリーがそれを台無しにする。まぁ勝手な思い込みで自分本位を期待してしまったので、仕方ないことかもしれない。学校図書館という森に(庭に!)迷い込んだ子どもたちがそこに魅せられていく、そんなドラマが読みたかった。
ここにはいろんな趣味のいい本がたくさん出てくる。きっと大崎さんの好みだろう。そういうのはいいんだけどなぁ。