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映画・演劇のレビュー

山田太一『時は立ちどまらない』

2024-05-24 16:31:00 | その他

あんなに好きだったのに、晩年の山田太一作品をオンエアで見ていない。テレビを見る余裕なんかなかったからだ。この本に収められた作品も『時はたちどまらない』しか見ていない。いずれも2010年代に書かれて放送された作品だ。『五年目のふたり』は山田さんの遺作となる作品らしい。この3作品を編者の刈谷さんは東日本大震災三部作と呼ぶ。

重くて暗いドラマだから、避けたのかもしれないが、あの頃はあまりに忙しくて、TVの前に座っていることはなかった。だけど山田太一の新作だから見なくては、とも思っていた。時代も変わっていた。山田さんは97年の『ふぞろいの林檎たちⅣ』を最後にして連続ドラマの筆を断った。(12年後に一度だけ『ありふれた奇跡』を書いたけど)

 
昨年11月29日に山田太一さんは亡くなった。僕の64歳の誕生日の2日後だ。(関係ないけど)リアルタイムで代表作は(70年代から80年代の)欠かさずすべて見た。10代から20代の多感な時期だった。『早春スケッチブック』が一番あの頃の自分にピッタリ嵌った。
 
キネマ旬報のリストを見たら(厳密にいうと)『ふたりの世界』からコンプリートしている。『パンとあこがれ』くらいから記憶にはあるし、『おやじ太鼓』も見ていた。まだ小学生だったけど。90年代に入ると未見の作品が出てくる。もちろん『ふぞろいの林檎たち』はすべて見た。最後の連ドラになった『ありふれた奇跡』も見たけど、2000年代の単発ドラマはほとんど見ていなかった。
 
キネマ旬報4月号の総力特集を読んでから、このシナリオ集を読み始めた。これが山田さんの晩年の仕事。

久しぶりのドラマ台本である。懐かしい気がする。昔は貪るように読んだ。向田邦子、市川森一、もちろん倉本聰。今回この晩年の3部作を読みながら、僕は山田太一が一番好きだったと改めてわかった。ご冥福をお祈りします。ありがとうございました。

PS  読みながらすぐ思い出した。『五年目のふたり』も見ていた。『キルトの家』のみが初見だった。

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