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映画・演劇のレビュー

『009 RE:CYBORG』

2013-06-09 22:00:59 | 映画
 『009』の新作である。僕は昔の東映マンガまつりで上映された2本の長編作品が好きだった。というか、あの頃、(小学校の頃ね)圧倒的に009が好きだったのだ。子供心をくすぐる。あの頃の子供なら、みんな自分が009ならば、なんていう夢を抱いたのではないか。009(と仮面ライダー)は特別だ。ふつうの人間に近いのに特別な存在で、でも、孤独で。009は世界と向き合うから、そこも子供心をくすぐる。世界中から集められた9人の戦士たち。その日本代表の009。

 今回久々の新作は神山健治監督によるアダルトタッチの009で、素晴らしい映像体験ができる。劇場では3Dで上映された。DVD(ブルーレイだが)で見ても十分その立体感や奥行きは堪能できる。

 だが、お話のほうが、それに及ばない。神の声を巡る話は、中途半端で、肩すかし。世界同時多発テロが、なぜ起きたのか。それを阻止するために何が必要なのか。話の発想は悪くはないのだが、その発想をまるで生かし切れていないから、ドラマには奥行きがない。「彼の声」を聞いたから、という動機をスタート地点にしてそれが何なのか。世界はどこに向かうのか。それを009たちがどう対処するか。善悪の線引きは難しい。それだけに、そのあわいで、どこにでも流れていく人の心をどこで堰き止め何を信じるのか。

 単純なヒーローものではない。だが、もともとこの企画自体はもっとシンプルなものだったのではなかったのか。世界が狭くなったから、どこにいても世界とつながっているように思えれる。離れた場所がネットによってリアルタイムでつながる。だが、それが本当につながったということなのか。そんなこんなを前提にして今回の009が作られる。でも、それってあまりにありきたりでつまらない。これが009である必要性が感じられない。

 今、009を描くことは困難なのだ。そのことを確認させるための映画ではないのだが、これは結果的にそうなってしまった。


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