
この作品を読む直前に読んだ『天使は見えないから、描かない』があまりに生々しく傷ましい作品だったから今度は楽しい作品を読みたかった。というわけでこの吉野真理子。彼女なら大丈夫。もちろんわかっていると思うけど、島本理生の小説は傑作である。一見するとやな小説だが、やなやつではない。9歳の初恋を成就させる話だ。しかも相手は18歳年上の父親の弟。だから2等親。結婚は出来ないし、親子ほど年も離れている。昨日読んでいてドン引きしつつも感心した。
さっきまで見てた夢(今は寝起き)で自分も9歳になって初恋をした。いや、13歳くらいかも。夢の中で自分は双子の女の子に恋している。彼女たちと3人でデートしている。(何で3人!)好きな方の子にライン交換しようとか持ちかけている。なんだこの夢は、というところで目が覚めた。そのあと、寝起きに読み始めたのが、この小説だ。(ようやく本題に戻ってきた!)
14歳の決心は生徒会長に立候補すること。やなやつがいいやつになるためにふたりの友人がサポートして選挙に挑むなんていうかわいいお話。だけど吉野真理子だから大丈夫。最初にも書いたけど。
ここまでの長々とした前置きはこれが恋の話じゃないけど、先に書いた夢の話に通じるものがある気がしてきたからだ。男ふたりと女の子。これも島本作品同様3人のお話である。(あれは女ふたりとだが)
生徒会長に立候補して、ふたりがサポートしてくれると先に書いたが、まさにそれだけで終わる。こんなにストレートで単純でいいのか、と心配するくらいにシンプル。少し肩透かしを食らった気分。
だけどこれはそれだけではない。本題はその後にある。続編である後半のもう一編『改造、その後』が面白い。そこでは生徒会長になった彼が何をするか、が描かれる。捨て猫の話や盗撮問題と取り組み、葵との恋の行方も描くこちらが本編である。読み終えてさすが吉野真理子って感心する。単純そうに見せかけて単純なんかじゃない。