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映画・演劇のレビュー

『黄金杖秘聞』

2015-09-27 22:22:23 | 映画

もう、言うことはない。大満足だ。この映画を満喫した。これは、こうなって欲しいという観客である僕たちの思い通りにお話が展開する映画なのだ。もちろん、それは娯楽活劇の王道を行く。

誰もが望む通り。それでいい。というか、それがいい! 1時間50分。手に汗握る。主人公の少女が戦う姿が美しい。どんどん強くなる。善と悪が壮大なバトルを繰り広げる。黄金杖を巡って。

派手なアクションだけではない。ここには映画の黄金時代のシリアルの面白さがある。しょぼいけど楽しかった連続活劇だ。『笛吹童子』とか『里見八犬伝』。東映のお子様向け映画。そんな感じのワクワクドキドキである。

CGを駆使して、すさまじい破壊の連続、動きはひたすら早くて激しくて、なにがなんだか、わからない。そんな勢いのコンピューター・ゲームの延長のアクション。そんなのばかりのハリウッド映画には、もう飽きた。だから肉体と肉体、剣と剣。生身のアクションが楽しい。それがブルース・リーのようなカンフーではなく、華麗な剣劇であることが、いい。

これはインドネシア映画界が満を持して20年振りで放つ武侠映画である。世界中で作られた様々なアクション映画を研究し、自分たちにしかできない、自分たちのための映画を作る。だが、それが世界を震撼させる傑作となる。初心に帰る、ということは大事なことだ。

これはまずお話がとてもよくできている。だから、飽きさせない。でも、何一つ新しいことなんかない。予定調和の極み。よし、待ってました! というノリ。期待を絶対に裏切らない。お約束。死に臨んだ師匠が4人の弟子たちを集める。秘伝の黄金杖を授ける。だが、それは上の兄ではなく、まだ少女の主人公に、である。一子相伝の秘儀。兄たちは師匠と少女から杖を奪う。師匠の非業の最期。復讐を誓う少女。彼女を助ける謎の男。隠された秘密。次つぎに彼女を襲う敵。はたして彼女は黄金杖を奪い返せるのか。

『黒衣の刺客』を見たとき、ホウ・シャオシェンらしい武侠映画だ、とは思ったけど、今、僕たちが見たいのはこういう映画ではない、とも思った。(おこがましい言い方だ!)じゃぁ、何が見たいというのか、というと、うまく言えない、と思った。

だが、この映画を見てわかった。見たかったのはこれじゃないのか、と思う。もう最初からそんなことは十分わかっていたけど、敢えて言わないでいた。ホウ・シャオシェンの挑戦はそれはそれで尊いと思ったからだ。しかし、この映画を見てやはり、と思う。

この映画の邪心のなさ。でも、それは娯楽とはこんなものだろ、となめているのではない。過去の遺産へのリスペクトの上に立つ。無欲の勝利だ。大事なことは技術ではなく、どれだけ面白がれるのか。そして、それを実現できるかだ。

リリ・リザとミラ・イスファンシャは、その責を若い監督イファ・イスファンジャに託した。彼は見事に実現した。美男美女が、華麗な、でも、昔ながらのアクションを見せる。裏切り、陰謀、修行、復活。手の汗握る冒険活劇。本気で楽しい。それがいい。マジやばい。


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