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映画・演劇のレビュー

『宇宙人ポール』

2013-11-21 21:47:55 | 映画
ポスターとかを見ると、見るからにとてもバカバカしい映画なのだが、実はかなり本気の映画なのだ。というか、これはただのパロディーではない。どちらかと言うと、マジで『ET』に挑戦しているのだ。もちろん、こちらは低予算の作品だし、コメディだし、明らかに元ネタは『ET』なのだが、まるで負けていない。それどころか、俺たちの方が大人の映画だし、と胸を張っているほどだ。まるでいちびってない。大真面目。シリアスな映画だ。ということで、これはかなりの拾い物だ。思いがけない面白さ。ぜひ、偏見を持たずに見るべきだ。見て損はない。

 ロードムービーで、SFオタクが主人公で、でも、それなのに全くふざけてない。主人公の2人は、みんなからふたりはホモだと疑われているけど、そうじゃない。でも、実はひとりはもうひとりの彼のことが好きだし、出来たら恋人同士になりたいと、思っている。だけど、もうひとりの彼にはその気はないし、ゲイではないし、女の子が好きだし。だから、切ない。これはそういうラブストーリーでもある。

 イギリスからやって来た彼らは、ここアメリカで、おのぼりさんになっているけど、結構怖い目にも遭うし、それより何より、宇宙人にヒッチハイクされて車に乗せてしまうのだ。忘れてしまいそうだったが、実はこの映画はそんも話がメインの映画なのだ。で、その宇宙人の名前がポールなのである。彼は実にハードボイルドな男で、2人はたじたじになる。さらには、女の子も仲間に入れて、旅は続く。

 コミコンと米中西部のUFOスポットをめぐる旅から一転、ポールを宇宙に帰すための冒険になるという展開も無理がなく、ある種の定石なのだが、このパターン映画がなぜかとても新鮮に映る。その理由は、この映画がありきたりを逆手に取って、正統派のドラマをきちんと見せてくれるからだろう。いろんな要素を盛り込みながら、それが不自然ではなく、無理なく収まっていく。一応コメディなのだが、しつこくはない。さらっと見せていくのだ。

 何よりもポールのキャラクター設定が効果的なのだ。彼の醒めた視線が、この映画を浮ついたものにしない。定番から逸れないのに、ベタにはならない。それどころか、快感ですらある。きちんと作られていると、賞讃したくなるほどだ。これって凄いことだ。この手の映画の王道を行く。これはある種の古典にすらなるような、よく出来た映画のお手本。スタンダードとでも呼びたくなるような映画なのだ。

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