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映画・演劇のレビュー

乃南アサ『すれ違う背中を』

2013-11-24 07:51:54 | その他
 「マエ持ち女2人組」シリーズの第2作。悪くはないけど、なんだか小説としてはゆるくて、読みながら、これでは時間潰しでしかないよな、と思った。たまたま手許に他に読む本がなくて前作を読んだのだが、そういう流れで、今回もたまたませっかく第2作があるので、文庫だし重くないから、読んでもいいかぁ、と思い手にした。なので、読んでしまったけど、それだけ。

 もちろん、よくできているのだ。だから、最後まで一瞬で読んでしまった。主人公の2人も、ガンバっているし、描かれるささやかなエピソードにはほっとさせられる。家族を失い、ひとりぼっちになった刑務所帰りの女2人が、慎ましくも、確かな足取りで生きていく姿は胸に沁みるから、前回と同じように4話を読み終えて、温かい気分にさせられた。だから、きっと、3作目があると、暇なときに読んでしまうことだろう。でも、それ以上のものはない。

 こういう感じの読書も確かにあるだろう、と思う。別に肩肘張って、気合いを入れなくても読書は出来る。だが、なんか僕は本を読むという行為に対して、構えるところがある。作者とのバトルのような感じになるのだ。それは映画や芝居を見ている時も同じだ。息抜きではなく、真剣勝負。でも、そういう緊張感が好き。

 だから、こういうルーティンワークに対して、少し腰が引けるのだろう。もちろん、乃南アサが手を抜いている、とか思うのではない。いろんなタイプの小説があっていい。だいたい僕自身も堅い小説は好きではないし。ただ、後に何も残らないのは嫌だ。(もちろん、この小説がそうだ、というわけではない。あくまでも一般論として言っている)

 今回、主人公の2人は福引きの当たりで、大阪に行く。ユニバとか難波とか、我々の地元を彼女たちが歩く。なんだか、それだけで楽しい。何もないような毎日に、旅行は少し刺激になるはず。でも、そこで、たまたま知り合いに会って、少し嫌な気分にさせられるという話。

 4話とも、ある種のパターン。要するに彼女たちの平和が乱されそうになる、というパターンだ。でも、そんなふうにしながらも、また、今日もⅠ日が終わる、というパターン。大きな事件は起こらないけど、小さな出来事はある。それが生きているということなのだ。たぶん。



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