
70年代のインディペンデント映画を見ている気分。ざらついたフィルム映像は今時のクリアなデジタル映像とは違う。そっけない編集にドキュメンタリータッチのお話。これはニューヨークのインディペンデント映画界で20年以上にわたり活躍してきたという撮影監督ショーン・プライス・ウィリアムズという人が長編初メガホンをとった作品らしい。なるほど。納得。
だけどこんな映画を本気で作る人がいるなんて驚きだ。今時こういう映画がある。めちゃくちゃをただ平気にする。16ミリフィルムによって撮られた荒い画像も20世紀っぽい。お話はまるでまともじゃないし、何がなんだかわからないまま主人公リリアンはどんどんさまざまな状況に巻き込まれる。それがラストまでずっと続く。
何がなんだかよくわからないまま流されていく。ラスト、これも唐突に無事お家に帰って来た後、エンディングのTVのニュース、さらにはエンドタイトルに流れる「何が起こるかわからない」とかいう歌詞の歌まで、とことん徹底している。
確かにここに描かれるアメリカは不思議の国だ。これがアメリカなのだと言われるとまぁ納得するけど、こんな悪夢の連続に対して彼女は何故か、驚くでもなく醒めたままなのはよくわからない。だけど彼女は次から次へと続く事態をなんとか乗り越えていく。
次々と起こるあり得ないできことの数々。修学旅行でワシントンD.C.にやって来た高校生たちがカラオケで大騒ぎしてたら、わけのわからない男が銃を持って乱入してきて、乱射する。リリアンはある男の子に手を引かれトイレから地下に逃げたら、そこからさらなる混沌に巻き込まれていく。この地下から不思議な世界に入り込むというのは『不思議の国のアリス』のような設定だけど、あまり童話やファンタジーっぽくはない。それどころか生々しい。この理解不能の連鎖、そのひとつひとつがアメリカの現実なのかもしれない、なんて思うけど、それよりこの訳のわからない混迷に戸惑うばかり。