
これはグラフィティやストリートアートというものについて、まるで知らなかったことを教えてくれる。日本のバンクシーと呼ばれるブラックロータス、グラフィティライターTELLを通して落書き(ボム)はアートなのかを問いかける。
主人公のアツシはブラックロータスの作品を見て、これを足掛かりにして自分の本が書けると踏んだところから話は始まる。ボムは作品ではなくただの落書きなのか。バンクシーはアートではなくあれも落書き。だけど高い評価を得ている。ブラックロータスに迫るための取材を通して見えてくるもの。
まず大宅裕子に会う。彼女からグラフィティアートのレクチャーを受け、さまざまな作家に会う。TELLに同行して、ブラックロータスの選挙の作品に手を加えたのは大宅自身だという結論に達する。そして自分またボムに手を出していいのか、決断を迫られるところで前半が終わる。まるで彼の取材に同行しているような気分でこの小説を読む。この臨場感にドキドキする。夜中に隠れるようにボムしている気分だ。犯罪行為に加担する快感。
後半どういう展開をするのかとワクワクして読み始めた。するとまるでタッチが変わり、わかりやすい「対決もの」になっている。なんだこれは? って感じ。ブラックロータス対TELL。これはこれで面白いけど、前半にあった緊張感はない。第一部の主人公、大須賀アツシは出ないし。ありきたりの話になってしまう。かなり残念。