
なんだかこれは壮大なスケールのタイトルである。しかもどこか間抜けな。もちろんわざとそういうものを提示しているのは明らかだ。イトウワカナ率いるintro久しぶりの大阪公演となる。これは一応はコメディなのだが、それに、お話自体は単純なんだけどなんだか変な感じだ。ただ笑わせる、わけではない。そのなんとも不思議な感触がいい。芝居はタイトル同様、落ち着かない。しかも摑みどころがない。
そして、やがて話は意外な展開を遂げる。たぶん。だけどそれがただのドタバタにはならない。だからといってシリアスな話というわけでもない。喪主不在から、気づくと何故か、なんとここにいるみんなが喪主に名乗りを上げることに。
109歳の祖母が亡くなった。彼女の息子である父親は世界一周の船旅に出ていて当分はまだ帰らない(帰れない)。故人の息子不在のまま、孫やひ孫たちが明日からの葬儀をどうするか、話し合いをするさまが描かれる。
冒頭の不思議ダンスから、さりげなく本編に突入して、喪主不在の中、同居していた孫夫婦は葬儀を委ねられる。正面を向いて遠くを見るシーンと隣室で眠る祖母のもとに行く時の静かな間が全編のアクセントになる。ラストの蕎麦を食べるシーンまで一気に描かれる。このラストを通して問題は不在の父だけでなく、本来の主役となる109歳の祖母の不在こそがこの集まりの目的であることを思い出す。祖母の大好きだった蕎麦をみんなで食べることでこの変な芝居は幸福なエンディングを迎える。イトウワカナの描くなんともチグハグな世界に魅了される。