中村義洋監督本人が出演している。とても、重要な役だ。しかも、ラストシーンは彼で終わる。とても目立っている。自作、自演のひとり舞台だ、とはいわないけど、とてもチャーミングで、ワンポイントリリーフの任を的確にこなす救援投手だ。
68分という上映時間が素晴らしい成果を上げる。そこも最初から確信犯だ。さらには、今年の最新作にして彼の最高傑作『みなさん、さようなら』へ向けてのウォーミング・アップにもなっている。これって、ちょっと出来過ぎ。なんだか、彼にとっては都合がよすぎる映画だ。しかも、これがまた、とてもよく出来た佳作なのだ。趣味がよくて、見終えた後で、とても幸せな気分にさせられる。話自身は、最終的にはとてもかわいそうな話なのだが、それを上回る幸福感に包まれる。人生は思い通りにはいかないけど、それでもなんとかなる。たとえ、この後死ぬことになろうとも、この瞬間の幸せは何物にも代え難い。
今回も、濱田岳が主演する。というか、彼でなくてはならない。彼は中村監督の分身だ。年齢不詳で、まるで天使のような男で、彼を見ているだけで幸せになれる。空き巣なのだが、あまり盗むことには興味ないみたいだ。自殺しようとしていたところを助けて、それから一緒にいる木村文乃と、いつも彼が呼ぶと来てくれて的確なアドバイスをくれる大森南朋。この3人のお話。ずっと彼らといたくなる。
中村監督は、濱田の会社の社長の役だ。というか、会社というか、ただの泥棒なのだが。しかも、社員は濱田だけ。濱田は「親分!」と呼ぶけど。いや、社長ではなくて、専務だったっけ。
自分と同じ生年月日、同じ年、時間、場所で生まれたプロ野球選手尾崎との因縁がお話の骨格をなす。奇跡のようなラストシーンも感動的だし、伊坂幸太郎らしいよく出来たお話なのだが、それ以上に、主人公の濱田を中心とする3人のアンサンブルがすばらしいことが大きい。お話自体より、まず、このなんとも言い難い空気が心地よいのだ。不幸な出来事があり、それを乗り越えて生きていく、というお話なのだが、それが嘘くさいものにならないのも、この空気があるからだ。彼らが醸し出すなんとも言い難いゆるぅぅぅい雰囲気。まるで仙人のような言動。それがあるから、このお話に説得力が生じる。というか、別にこの映画は説得なんかしないけど。
結果的にこれが『みなさん、さようなら』へ到達するための軽いウォーミング・アップになろうとも、これは確かな2012年を代表する映画の1本だ。というか、それくらいのスタンスがあるから、これはここまでの傑作になったのだろう。震災後の仙台を舞台にして、被災地で生きる人たちを励ますための映画にもなっている(かもしれない)。すべてが幸福につながった稀有の作品である。タイトルの秘密は映画を見ればわかる。それは、なんでもないエピソードに見せかけてとても深いし、感動させられるエピソードなのだ。
68分という上映時間が素晴らしい成果を上げる。そこも最初から確信犯だ。さらには、今年の最新作にして彼の最高傑作『みなさん、さようなら』へ向けてのウォーミング・アップにもなっている。これって、ちょっと出来過ぎ。なんだか、彼にとっては都合がよすぎる映画だ。しかも、これがまた、とてもよく出来た佳作なのだ。趣味がよくて、見終えた後で、とても幸せな気分にさせられる。話自身は、最終的にはとてもかわいそうな話なのだが、それを上回る幸福感に包まれる。人生は思い通りにはいかないけど、それでもなんとかなる。たとえ、この後死ぬことになろうとも、この瞬間の幸せは何物にも代え難い。
今回も、濱田岳が主演する。というか、彼でなくてはならない。彼は中村監督の分身だ。年齢不詳で、まるで天使のような男で、彼を見ているだけで幸せになれる。空き巣なのだが、あまり盗むことには興味ないみたいだ。自殺しようとしていたところを助けて、それから一緒にいる木村文乃と、いつも彼が呼ぶと来てくれて的確なアドバイスをくれる大森南朋。この3人のお話。ずっと彼らといたくなる。
中村監督は、濱田の会社の社長の役だ。というか、会社というか、ただの泥棒なのだが。しかも、社員は濱田だけ。濱田は「親分!」と呼ぶけど。いや、社長ではなくて、専務だったっけ。
自分と同じ生年月日、同じ年、時間、場所で生まれたプロ野球選手尾崎との因縁がお話の骨格をなす。奇跡のようなラストシーンも感動的だし、伊坂幸太郎らしいよく出来たお話なのだが、それ以上に、主人公の濱田を中心とする3人のアンサンブルがすばらしいことが大きい。お話自体より、まず、このなんとも言い難い空気が心地よいのだ。不幸な出来事があり、それを乗り越えて生きていく、というお話なのだが、それが嘘くさいものにならないのも、この空気があるからだ。彼らが醸し出すなんとも言い難いゆるぅぅぅい雰囲気。まるで仙人のような言動。それがあるから、このお話に説得力が生じる。というか、別にこの映画は説得なんかしないけど。
結果的にこれが『みなさん、さようなら』へ到達するための軽いウォーミング・アップになろうとも、これは確かな2012年を代表する映画の1本だ。というか、それくらいのスタンスがあるから、これはここまでの傑作になったのだろう。震災後の仙台を舞台にして、被災地で生きる人たちを励ますための映画にもなっている(かもしれない)。すべてが幸福につながった稀有の作品である。タイトルの秘密は映画を見ればわかる。それは、なんでもないエピソードに見せかけてとても深いし、感動させられるエピソードなのだ。