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映画・演劇のレビュー

邂逅『万葉奇譚 ~たなばたの誓歌~』

2019-07-15 15:58:09 | 演劇

 

壮大な歴史ロマンを、なんと、あの音太小屋で見せる。華やかな歌と踊りで絢爛豪華なミュージカルスタイルを貫く邂逅が、十分な舞台装置もない、この狭い空間で、たった4人芝居として、これだけのスケールの作品を見せるのだ。チープなものになってしまうと、成り立たない芝居だけれど、それを豪華な衣装と、その早変わりで、目にも鮮やかな大河ロマンに仕立てあげる。1人で何役もこなすのだが、そのスピードがこの芝居の命だ。お話の展開の速さと相まって目眩くドラマを提示できたのが、今回の勝因だろう。

 

1時間45分という上演時間もいい。これはとても適切な長さだ。これ以上長くなってもダレるからダメだし、これ以下では当然伝えきれない。そのバランス感覚が見事。ボリューム感もあり、内容の壮大さとマッチしている。キャストを4人に絞り込んだのがよかった。彼女たちに10数人のキャストを自在に演じさせることで、勢いのある作品になったのだ。

そんな中でも、柿本人麻呂という怪人(中村多喜子が演じる)を主人公にして、歴史が繰り返される無念と、その中で約束を果たそうとする彼の想いが伝わる芝居に集約したのも賢明だった。無理しないで贅沢な芝居を作る。それはなかなか出来ることでない。

 


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