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映画・演劇のレビュー

『ホットギミック』

2019-07-15 15:25:23 | 映画

 

山戸下結希監督の長編第二作。前作も尖った映画だったけど、今回もヒリヒリするような痛みを持続させる。恋愛映画だけど、従来の甘いばかりの少女漫画ではない。ヒロインと彼女を好きになる(と、同時の彼女が好きになる)3人の男たちとの関係性が普通の映画とはまるで違う描き方をする。恋愛以外の感情は完全に削除される。だが、そこにあるのはリアルではなく感覚的な描写ばかりだ。観念の世界ですべてが進行する。彼らが暮らす空間も生活空間ではない。家や街は彼らの心情をトレースする。現実ではない。

 

兄と妹、2人の幼なじみ、すべてが象徴的に描かれるから、その極端な描写も決して嘘くさくはならない。普通ならこんなお話は受け入れられないし、バカバカしくて見ていられないところだ。だけど、緊張感を持続したまま、見てしまえる。スタイリッシュな映像ゆえ、それは現実ではなくある種の心象風景のように見えるからだ。感情だけでお話は展開していくから2時間はきつい。だけど、集中して見られる。感情を描くのに彼らの表情やリアクションはとてもクールで彼らの揺れる想いは、心を突き刺す。前作『溺れるナイフ』もこんな感じだったけど、今回は東京の街中を舞台にしているのにその違和感は半端じゃない。山戸監督のセンスで切りとられた風景の圧倒的な力に魅了される。短いカットの積み重ねが彼らの感情を生々しく伝える。圧倒的な違和感に打ちのめされる。好きではないし、どちらかというと嫌いな映画だけど、最後まで目が離せない。

 


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