
『盆がえり』以来、三年ぶりとなる寺田夢酔さんの待望の新作だ。これだけ長いスパンが必要だったのは、彼が自分の劇団を大切にして、チームで作品作りをしていく上でのどうしても必要な時間だったのだ、と思う。別に慌てて新作を発表していくことはない。自分のペースで焦らずゆっくりと熟成させていけばいいのだ。
今回の作品はセドリック・クラピッシュ監督の傑作『スパニッシュ・アパートメント』を想起させる群像劇だ。ローマ郊外にある日本人だけの下宿屋を舞台にして、ここに暮らす人々の日常をスケッチしていく青春ものという体裁になっている。個々の役者たちの個性を大事にして、彼らが自然にこの空間緒中に溶け込み生活している姿を、丹念に描き、交感の持てる作品となった。
先代である祖父からここを引き継いだ若い管理人さん(竹田朋子)を中心にしてここに暮らす人たち、ここに出入りする人々のやり取りを通して、そこから彼らが抱える問題が浮かび上がってくるというよくあるパターンを踏まえている。しかし、これがルーティーンワークにはならなかったのは、ひとえに寺田さんの役者に寄りきらず、距離をとるというスタンスがあったからだ。定点観測に徹していく姿勢が見事だ。
彼が掲げる3本柱のひとつ「おとなしい演劇」(それは一時期はやった静かな演劇とは微妙にちがうものだ。)の路線をしっかり守って、節度と慎みのある清潔な芝居として纏め上げることに成功している。感情が高まって爆発していく直前で上手くかわしていく見せ方もいい。へんにドラマドラマされたなら、見ていて嘘くさいものになる。そこを巧みにかわしていくのがいい。
この芝居の舞台がローマである必然性がないことや、日本人以外の現地の人が一切出てこないことも不自然だし、せめて彼らが周囲のイタリア人とどう接しているのかが、感じさせる描写があってもよかったのではないか、と思ったりもした。それ以外にも気になる場面はいくつかあったが、欲張らずに、今自分のすべきこと、できることをしっかりやりきろうとする。そんな寺田さんのやり方には共感を抱いた。無理しないで確実に前進していこうとする。そこが素敵だ。これからも応援していきたい。
今回の作品はセドリック・クラピッシュ監督の傑作『スパニッシュ・アパートメント』を想起させる群像劇だ。ローマ郊外にある日本人だけの下宿屋を舞台にして、ここに暮らす人々の日常をスケッチしていく青春ものという体裁になっている。個々の役者たちの個性を大事にして、彼らが自然にこの空間緒中に溶け込み生活している姿を、丹念に描き、交感の持てる作品となった。
先代である祖父からここを引き継いだ若い管理人さん(竹田朋子)を中心にしてここに暮らす人たち、ここに出入りする人々のやり取りを通して、そこから彼らが抱える問題が浮かび上がってくるというよくあるパターンを踏まえている。しかし、これがルーティーンワークにはならなかったのは、ひとえに寺田さんの役者に寄りきらず、距離をとるというスタンスがあったからだ。定点観測に徹していく姿勢が見事だ。
彼が掲げる3本柱のひとつ「おとなしい演劇」(それは一時期はやった静かな演劇とは微妙にちがうものだ。)の路線をしっかり守って、節度と慎みのある清潔な芝居として纏め上げることに成功している。感情が高まって爆発していく直前で上手くかわしていく見せ方もいい。へんにドラマドラマされたなら、見ていて嘘くさいものになる。そこを巧みにかわしていくのがいい。
この芝居の舞台がローマである必然性がないことや、日本人以外の現地の人が一切出てこないことも不自然だし、せめて彼らが周囲のイタリア人とどう接しているのかが、感じさせる描写があってもよかったのではないか、と思ったりもした。それ以外にも気になる場面はいくつかあったが、欲張らずに、今自分のすべきこと、できることをしっかりやりきろうとする。そんな寺田さんのやり方には共感を抱いた。無理しないで確実に前進していこうとする。そこが素敵だ。これからも応援していきたい。