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映画・演劇のレビュー

『踊りに行くぜ!! 9』

2009-02-27 00:48:22 | 演劇
 アイホールでのスペシャル・プログラム。出演は鈴木ユキオ×辺見康孝、チョン・ヨンドゥ、 北村成美 、j.a.m.DanceTheatre 、 yummydance×トウヤマタケオ楽団(登場順)

 初めて『踊りに行くぜ!』を見た。いつもフライヤーは見てる。すごいなぁ、と思いつつも、なかなか見に行くチャンスがなかった。遠くまで行くのは嫌だし、(なんてわがまま)普段は芝居を見るからなかなかダンスまでもは見れない。しかも、ダンスは門外漢だし、なかなか食指をそそられないというのも事実だ。今回もアイホールから招待を頂かなければきっと、当分は見る機会がなかったことだろう。

 先月の『ダンスに時間21』もそうだったが、ダンスを見るのって凄く疲れる。知らぬ間に緊張してるのだろう。すべてを見逃さないように、だなんて感じで気張ってしまう。その結果何も見ていないことも多い。駄目だなぁ、と思う。もっと肩の力を抜いて見れればいいのだが。

 と、いうことで今回の5組である。とても刺激的だった。バラエティに富んでいて満腹になる看板に偽りなしのスペシャル・プログラムだ。辺見康孝さんのバイオリンが奏でる強烈なノイズと鈴木ユキオさんの暴力的な肉体のタッグマッチはそのあまりの激しさゆえに唖然とさせられ、呆然としたまま見続けるしかない。やがてバイオリンが美しい旋律を奏でるのだが、緊張は持続したままだ。セッションというよりも対決のように見えた。

 続くチョン・ヨンドゥさんとオ・ミンジョンさんによる静かなコラボレーション(『風の合間で』)は鈴木、辺見組とは対照的でとても心地よい。しかし同じように緊張感漂うステージだった。くりかえしがあんなにも心地よく沁みてくるのはなぜだろう。なめらかな体の動きでその自然体としかいいようがないダンスは空間を支配する。2人の体はその雰囲気だけを残して存在感を消し去る。まるで見えないものを見ているような気分にさせられる。

 北村成美さんの『パラシュュート』はザッツ・エンタテインメントとしか言いようがない。すさまじいエネルギー。もうやりたい放題のスペクタクル。ラストで大量のスーパーボールが降ってくるまで、あの小さな体で圧倒的な存在感を見せてくれる。

 j.a.m.DanceTheatre の森井淳さんと今田葉子さんによるデュオは、くっつきそうでくっつかない唇と唇の見せる絶妙の距離がいい。ワン・アイディアできちんとこの短編を見せきる相原マユコさんの演出手腕は鮮やかだ。

 yummydance×トウヤマタケオ楽団によるセッションも、これも見ていて楽しいものだった。ヤミーのダンスは無表情でかわいい。それのトウヤマタケオ楽団による音楽が寄り添う。両者は付かず離れずの関係を保つ。その節制のとれたコラボは気持ちがいい。あまり密にはなりすぎない。どちらかというとそっけないくらいだ。だが、そこがいい。

 5組のダンスを見終えると、実はぐったりとなた。面白かったのに、凄く疲れた。やっぱり緊張していたのだろうか。もっと余裕を持って見れたらいいのに、なかなか難しい。見てからもう1週間がたつので、正直言うと細かいことはあまり覚えていない。

 客席からステージに上がって、舞台の片隅で着ていたコート服を脱ぎ、きちんとたたんで、靴も揃えてから、踊り始めたチョン・ヨンドウさんとオ・ミョンジョンさんのたたずまいがなぜか一番印象に残っている。

 全く方向性の違う5つのステージを一気に見て、疲れ果てながらも、かなり幸福な気分で家路についたすてきな一夜だった。


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