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映画・演劇のレビュー

『三国志』

2009-02-27 00:06:09 | 映画
 こういう映画が秘かに上映されているのです。普通なら見ないだろな。でも、興味深々。だから、怖いもの見たさで見てしまいました。『レッド・クリフ2』を見る前にこれを見たのは、よかった。ジョン・ウーも見ただろうか。この魂の一作を!

 素晴らしい、だなんて言わない。これを扱き下ろすのは簡単だ。欠陥は明白だ。だが、そこをあげつらって鬼の首を取ったようなことを言われても困る。この映画はすべてわかった上でこういう選択を取ったのだ。天晴れだと言うべきである。要はアプローチの問題だからだ。『三国志』を1時間40分でまとめるなんて不可能なことは誰の目にも明らかだ。ジョン・ウーなんて赤壁の戦いのみ(まぁ、それだけではないけど)で5時間である。

 ピン・ポイントの『レッド・クリフ』に対し、これはタイトル通り『三国志』全体をターゲットにして、しかもダイジェストにはしないで処理しようとした野心作だ。主人公は趙雲(アンディー・ラウ)に絞り込んだ。しかも、彼の最初の戦いと、第1の試練のみを描き、そこから一気に年老いた彼の最期の戦いを見せる、という破天荒な構成である。これでは趙雲ひとりのドラマのダイジェストにすらならない。だが、監督のダニエル・リーはこの驚きのストーリーラインで象徴的に三国志という大河ロマンのエッセンスを凝縮させて見せる。これはある意味で『レッド・クリフ』以上の究極のピン・ポイントである。

 すべてを描くことは不可能である以上、中途半端は全く意味をなさない。ならば、ありえないくらいに切り詰めて見せるしか活路はない、という判断だ。その思い切った判断のもと、すさまじいモブ・シーンを展開し、この大ロマンの香りを損なうことなく見せることに成功した。主要キャストは3人。趙雲以外は架空の人物というのもすごい。サモ・ハンの兄貴との友情を横糸に、マギーQの曹操の孫娘との戦いを縦糸にして、趙雲という男の生き様を鮮烈に見せるアクション映画だ。

 アクション監督を兼ねたサモ・ハン肝入りの肉弾戦が見れる。単純なCG映画にはしない。きちんとした武侠映画でもある。諸葛孔明や主君である劉備、敵である曹操。さらには関羽たちのドラマもきちんと織り込みながら、『三国志』の終わりにまでににらみを利かせたドラマとなった。とてもよく考えられている。『三国志』全体を期待した向きには拍子抜けする映画かもしれないが、そんな不可能なことよりも、この映画が可能にしたものを高く評価したい。

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