
たまたまだけど、『地図とスイッチ』を読んだ直後に見た映画がこれだ。大好きな瀬々敬久監督の新作だから、公開されてすぐに見た。内容は不問だ。彼が手掛けた映画、それだけで必見である。でも、今回は少し違和感がある。さすがにこの題材は彼向きではない気がする。
ある夫婦に子供が生まれるところから、始まり、その子が大人になり、結婚もして、やがて子供も生まれる。なんだか先の『地図とスイッチ』との共通点が多い。これは重松清の人情小説の映画化である。今時こんな映画が作られるなんて驚きだ。重松小説はたくさん映画化されてはいるけど、これはあまりにベタ過ぎていただけない。それをそのまま映画にした。そりゃぁ、そうするしか、仕方あるまい。てれることなく、素直に描いた。あざとい映画になることも覚悟の上だ。今の時代、いくらなんでも、こんなお話で映画を作らない。だから、これはこれでひとつの挑戦なのかもしれない。
甘いだけの映画にしか、ならない。だから、見ていてしらける。今時こんなのはなしだ、と思う。嘘くさい。鼻白む。阿部寛が昭和の香りがプンプンする父親を演じる。頑固親父。涙もろい。すぐ喧嘩して、暴れる。おひとよし。等々。そんな彼と息子(北村匠海。初登場のシーンでの中途半端な坊主頭が変だ!)を周囲の人たちが助ける。
ここには特別な話は一切ない。昭和30年代から現代まで。誕生から、子供時代、高校生、そして大学で上京し、疎遠になる。喧嘩別れしたまま時間だけが過ぎていく。帰郷。結婚、子供の誕生、成長。ラストでは、なんと父の死まで。ある親子の人生のすべてが描かれる。
でも、それはこんなにもたわいないお話なのだ。もちろん、わざとそうしている。日本中のどこにでもあったようなお話。それを2時間20分のダラダラした長さの映画にした。瀬々監督の個性や才気はまるで感じられない平凡な映画である。出てくる人たちはみんないい人たちばかり。でも、こんな映画もあっていい。ちゃんと丁寧に作った。作り手の誠実さがちゃんと伝わる。だから、嫌いではない。