人の心の中に入り込む装置なんていうメルヘンチックな設定を、もう少しうまく生かせなかったのだろうか。アリスの物語を使っているが、その設定も生きていない。心の中なんかに入り込まなくても十分わかることばかりだし。心の中に入らなくては見えなかったものをそこに提示しなくては意味ない。だいたい研究所の所長が彼女の心の中に入り込み彼女が心を閉ざした謎を見つけてくるというお話自体が安易だ。
現実世界の彼女と . . . 本文を読む
作、演出を担当した南陽子さんは高校演劇出身で、卒業後もずっとHPFで部員の少ない演劇部のアドバイザーとして優れた作品を毎年夏に提供してきた。そんな彼女がついに満を持して挑む小劇場界デビューである。彼女が、大人の役者を使って何の制約もなく自由に作ったならいったいどんな芝居を作るのだろうか、興味津々で劇場に。
スタジオ☆ガリバーの小空間を生かしたハート・ウォーミングを何の気負いもなく見せてくれた . . . 本文を読む
上手や下手からではなく、必ずセットの下からすっと出てきて芝居を始める役者たち。無表情で、とんでもないことをしゃべる。でも、それを全く聞いていない人たち。だからコミュニケーションは成立しない。だが、それ(コミュニケーションの不在、ね)がこの芝居のテーマではない。彼らはそんなものなんて最初からない世界に存在しているのだ。なのに、そんな彼らがお互いに関わり合いドラマは展開していく。なぜだ? なぜかお話 . . . 本文を読む
工藤俊作さんによるプロデュース公演。今回でついに第10回公演となる。台本は焚火の事務所の三枝希望。演出は極東退屈道場の林慎一郎。この異色のコンビがこの作品を興味深いものとする。
ここに描かれる重くて暗い世界は三枝さんならではのもので、こういうタイプの芝居が近年どんどん減ってきて、明るくてわかりやすく単純な芝居が増えている。だが、世界は必ずしもそんなに明快なものではない。
ひとりの鬱屈した . . . 本文を読む