70年代のインディペンデント映画を見ている気分。ざらついたフィルム映像は今時のクリアなデジタル映像とは違う。そっけない編集にドキュメンタリータッチのお話。これはニューヨークのインディペンデント映画界で20年以上にわたり活躍してきたという撮影監督ショーン・プライス・ウィリアムズという人が長編初メガホンをとった作品らしい。なるほど。納得。だけどこんな映画を本気で作る人がいるなんて驚きだ。今時こういう映 . . . 本文を読む
こんなシンプルなタイトルで感動ドラマ(たぶん)を演出するのは、すっかり「メジャー大作映画ならオレに任せろ」という感じになった瀬々敬久。そつなくどんなタイプの映画でもこなし巨匠の風格すら漂わせる。だけど僕はやはりインディーズで(国映のピンク映画だが)暗い作品を撮っていた頃の彼が好きだ。今回もなんだかあまり乗れなかった。見る前は感動の押し売りを危惧したが、見た映画はまるで違う作品だった。だけどなんだか . . . 本文を読む
これは城定秀夫監督が本領発揮した嫌な感じの映画。どこまでもとことんやるのが城定流。彼の佳作『女子高生に殺されたい』でやったことをさらに突き詰めたような映画になった。竹原ピストルが素晴らしい。あんな嫌な小物がこの映画を象徴する。ズルくて,汚くなくて。強いものには媚びへつらう。優しいものにはつけ入る。彼だけではない。嫌なヤツ、ズルいヤツしか出てこなくて、そいつらがとことん嫌なままでラストまで突入する。 . . . 本文を読む
『第三夫人と髪飾り』のアッシュ・メイフェア監督の第2作。今回も抑えたタッチで静かに哀しい愛の物語を描く。ただ、前作同様きれいな映像が流されていくだけで、そこにお話はついていかない。悪い映画ではないけど、内容がない。というか、想いが伝わりきらない。決してスカスカで無内容だ、なんて言わないけど。でも正直言うとそんな感じ。トランスジェンダーを扱う映画だけど、彼女の想いが描きれないからこちらも表面的にしか . . . 本文を読む
Netflix映画の大作でアカデミー賞作品『西部戦線異常なし』のエドワード・ベルガー監督の日本劇場初公開作品。(後で調べたら2015年に『僕らの家路』という作品が公開されていたようだ)あの前作こそ大きな劇場で見るべき映画だけど、劇場未公開。そして今回のこんな密室劇が劇場で。しかも小さな劇場は平日朝1番から満席状態。なんだかなぁ、と思う。もちろんそんなことは映画自体とは何の関係ない話だけど。映画は素 . . . 本文を読む
昨年台湾で公開されたトム・リン監督久々の台湾映画である。妻はこれを見るために昨年の秋台湾に行っている。この正月にふたりで台湾に行った時には残念ながらもう公開は終わっていたが、後1週間遅く行っていたなら台中の名画座(全球影城)で見ることができたのに、といういわく付きの映画だ。今回の大阪アジアン映画祭でようやく見ることができた。モノクロ映像が美しい。寂しくて切ない映画だ。冒頭の誰もいない静かな夜道をフ . . . 本文を読む
大阪アジアン映画祭常連であるアダム・ウォン監督の新作。もちろん今年の大阪アジアン映画祭で日本初披露。上映後の理知的な彼によるQ&Aは楽しかった。作品に対して真摯に語る彼の言葉が心地よい。(もちろん広東語はわからないけど)映画は2時間12分の大作。3人の聴覚障害者を主人公にする。難聴者だが人工内耳を装着して健常者と普通に会話を交わせることが出来るソフィは幼い頃から母親によって手話を禁じられて . . . 本文を読む
監督が小林啓一じゃなければこんな映画を見ないだろう。バカバカしい話を彼なら不思議なリアルで描くことができるはずだと信じた。まさかの映画が彼の身上である。なのにこれこそまさかの展開で、反対にあり得ないつまらない映画を作ってしまった。これは信じ難い大失敗作である。見終えた今も信じられない。あの曲者小林啓一がこの素材でこんなに何の仕掛けもないつまらない映画を作るなんて、あり得ない。だいたい福本莉子が高校 . . . 本文を読む
橋本愛主演映画は久しぶりではないか。しかも監督は矢崎仁司。これに期待しないわけにはいかない。さらには原作は柚木麻子。『私にふさわしいホテル』の姉妹編のような映画になっている。あの映画のヒロインのんが同じ役で登場するというサプライズまで用意して矢崎監督はいつもの硬さもなく、柔らかい映画に仕立てている。とはいえ、ただ甘いだけの恋愛映画ではない。主人公であるふたり(相手役は中川大志)だけでなく、メインと . . . 本文を読む
これは「すごい!」というか、「あきれた!」というか。こんな徹底した映画をよく作った。いいか悪いかというのはまた別問題として。最初から最後まで殺し合いばかりが続く。まるで話のない暴力映画。タイトル前に本来ならラスボスの竹中直人が殺される。その後主人公である生田斗真まで殺される! えつ?それって何。こんな始まりをする映画をよく作ったものだ。しかもこの先もまともな話もなく、ひたすら殺し合いが続く。12年 . . . 本文を読む
昨日、日本の1970を考える映画を見たこともあり、ついついこのタイトルに惹かれて見た。もちろんこれは昨年評判になった韓国映画で公開時に見たかった作品である。ようやく配信がスタートしてワクワクしながら見たのだけど、僕にはあまりピンとこなかった。リュ・スンワンの監督作品だからと安心して見ていたのだが、あまり彼らしくはない。前作の『モガディシュ』は面白かったけど、今回はコメディタッチの娯楽映画なのになん . . . 本文を読む
無理無理時間を作って大阪アジアン映画祭短編プログラムEを見た。ここしか時間はない。しかもこれを見ると『日本万国博』の冒頭30分が見れなくなる。だけどあれは2時間53分もあるし、たぶん以前見ているからこちらを優先した。移動は2分。国立国際美術館の隣に中之島美術館があるから、ね。3本の短編には期待した。だけどいずれも残念な仕上がりである。短編はなかなか難しいなぁ、と改めて思った。3本の中でなら一番短い . . . 本文を読む
1970年の作品である。山田洋次は『男はつらいよ』をヒットさせてそのご褒美に自分が本当に「今」作りたい映画を作った。そしてこの後、『故郷』『同胞』と続く3部作が作られた。あれが映画作家山田洋次のキャリアにおけるクライマックスだった。僕が劇場でリアルタイムに見たのは『同胞』だけだけど、そこには間に合った。今更ながらよかったなと思う。あの時代の目撃者になれた。こんな映画をよくあの時代に作ったものだ。感 . . . 本文を読む
今回の中之島映像劇場は大阪万博。もちろん2025ではない。あの輝かしい1970である。あの時僕は小学4年生で、あの場所で「未来」の美しさと「世界」の広さを体感した。千里丘は夢のような場所だった。あれから55年。この春から始まるらしい大阪万博には行かない。たぶん、いや絶対僕は夢の残骸である夢洲には行かないだろう。ディストピアを見たくはない。1970。もちろんあの頃、あの場所には未来だけがあったわけで . . . 本文を読む
昨日の3本が面白かっただけに、(予定を変更して今日も見に来た)期待したのだが残念ながら5本とも昨日の作品には及ばない。午前中に見た2本にはガッカリした。矢口史靖、鈴木卓爾の『ONE PIECE』のコンセプトを引き継ぐ『TEN EASY PIECES』だが、これはワンシーンワンカット1作品5分10話からなるオムニバス。10人の監督による作品。いずれもコントのレベルにしかならない。5分は厳しい。『不完 . . . 本文を読む