
Netflix映画の大作でアカデミー賞作品『西部戦線異常なし』のエドワード・ベルガー監督の日本劇場初公開作品。(後で調べたら2015年に『僕らの家路』という作品が公開されていたようだ)あの前作こそ大きな劇場で見るべき映画だけど、劇場未公開。そして今回のこんな密室劇が劇場で。しかも小さな劇場は平日朝1番から満席状態。なんだかなぁ、と思う。
もちろんそんなことは映画自体とは何の関係ない話だけど。映画は素晴らしかった。正直言ってこれが今年のアカデミー賞最優秀作品であろう。これを見た今、どうして『アノーラ』なのか、と思う。これは今こそ見るべき映画である。
タイトル通り教皇選挙(コンクラーベ)を描く極上のミステリーである。これはローマ教皇が亡くなった後を引き継ぐための選挙戦を描くのだが、二転三転する選挙の行方にドキドキさせられるだけでなく、今を生きる我々にさまざまなことを問いかける。宗教って何なのか、何故戦争が絶えないのか、を。枢機卿たちの選挙戦を勝ち抜くための醜いさまざまな足の引っ張り合いには情け無くなる。この人たちがバチカンの、カトリックのトップに立つ立場にある人たちなのだ。そして思う。権力闘争と信仰がここまで身近なものなのか、と。
自分たちの正義を押し通すことは間違いではない。だけどそれがたくさんの人たちの命を奪うことにつながるのは解せない。この娯楽映画は政治と宗教の関係をこんなにも簡単にかつ明確に描く。バチカンへの抗議自爆テロや、ラストのまさかの結末まで、息をも着かせぬ展開である。