
『第三夫人と髪飾り』のアッシュ・メイフェア監督の第2作。今回も抑えたタッチで静かに哀しい愛の物語を描く。ただ、前作同様きれいな映像が流されていくだけで、そこにお話はついていかない。悪い映画ではないけど、内容がない。というか、想いが伝わりきらない。決してスカスカで無内容だ、なんて言わないけど。でも正直言うとそんな感じ。
トランスジェンダーを扱う映画だけど、彼女の想いが描きれないからこちらも表面的にしか伝わらない。ヒロインのサンは女性にしか見えないし。きっと女の人が演じているなと思って見ていたが、終わってから調べたら、サンを演じたチャン・クアンはトランスジェンダーだという。映画はリアルじゃないけど、現実のリアルに驚く。
まだ若いふたりの恋人たち。1998年、サイゴン。ナイトクラブの歌手のサンとボクサーのナム。彼が好きだから、愛し合っているから、彼女は本物の女になりたい。手術をして完璧な女の身体を手にしたい。だけどナムはそんな彼女についていけない。今のままでいい、と思う。少しずつすれ違うふたりの想い。そんな繊細なドラマを美しい映像で捉える。
ただ、やはり映画自身はきれいごとでしかないからあまり感心しない。お話に説得力はない。後半ナムが他の女の子を妊娠させたところから少し面白い展開になる。なんと3人で暮らし始まるのだ。だけど、そこにも説得力がないから興味は続かない。さらにはナムが過剰防衛から殺人を犯すという話になるが、その裁判も含めてまるでリアリティがないからガッカリする。残念だけど、2時間退屈だった。