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習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

井上先斗『イッツ・ダ・ボム』

2025-03-27 03:18:00 | その他
これはグラフィティやストリートアートというものについて、まるで知らなかったことを教えてくれる。日本のバンクシーと呼ばれるブラックロータス、グラフィティライターTELLを通して落書き(ボム)はアートなのかを問いかける。主人公のアツシはブラックロータスの作品を見て、これを足掛かりにして自分の本が書けると踏んだところから話は始まる。ボムは作品ではなくただの落書きなのか。バンクシーはアートではなくあれも落 . . . 本文を読む
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森沢明夫『桜が散っても』

2025-03-26 06:17:00 | その他
突然春真っ盛りになったが、そろそろ桜が開花する時期になってきた。ということでまずこのタイトルの本を読むことにした。森沢明夫だから、安心して読める。だけどあまり多くは期待はできない。安全パイって感じ。だけど今回は少し驚く。最初思った話から強引に逸脱していく。もちろん僕が勝手に想像しただけで森沢明夫は最初からこういう展開を目論んでいたのだろうが。冒頭の死から始まるミステリーかと思ったら、もちろんそうじ . . . 本文を読む
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五十嵐貴久『死写会』

2025-03-25 16:55:00 | その他
こんなにも単純でおバカなタイトルを堂々とつけたホラー小説なら受けて立って読んでみようか、と思った。別に受けて立つ必要はないけど、ね。まぁつまらなかつたら途中で止めればいいし、という軽い気持ちで手にした。それに映画界を舞台にした作品である。少し気になったし。ということで、読み始めたのだが、聞きしに勝る(というか、何も聞いてないけど)エグさ。こんな荒唐無稽な小説でいいのか、と呆れる。まぁエンタメ・ホラ . . . 本文を読む
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額賀澪『夜と跳ぶ Re.東京ゴールデン・エイジ』

2025-03-25 06:43:00 | その他
シリーズの第2作。東京オリンピック金メダリストのストリート・スケートボーダーとそのフィルマーとなったカメラマンのふたりがロスオリンピックを目指す。前作がとても面白かったから今回も楽しみにして読んだ。漫画みたいな小説で読みやすい。ただ今回は「スポーツもの」というよりも「事件もの」になっている。それはそれで悪くはないけど、なんだか安物の連ドラみたいだ。麻薬取引現場を目撃して拉致されたり、児童誘拐犯にさ . . . 本文を読む
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一穂ミチ 他9人『いただきますは、ふたりで』

2025-03-24 06:49:00 | その他
サブタイトルには『恋と食のある10の風景』とある。10人の作家たちによる7つの小説と3つのエッセイ。そうそうたるメンバーが並ぶ。(しかもみんな女性! いや、君嶋彼方は男性だった)このタイトルだから当然「恋と食」を扱った作品が並ぶけど、ここに描かれる恋はあまり幸せには見えない。壊れそうなものを食事によってなんとかしてフォローしているって感じだ。だけどこの微妙なバランスがいい。壊れそうで壊れないのは食 . . . 本文を読む
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小手鞠るい『イズミ』

2025-03-22 07:38:00 | その他
続々と出版される小手鞠るいの新刊。彼女は凄い勢いで仕事をこなしている。1年に何冊出るのか、驚きである。だけど今回はいつもとは一味違う作品である。これは余白だらけの小説である。だけどその余白のにはさまざまな想いが込められている。いや、想いというより、祈りとでも呼ぶべきものだ。小手鞠るいは今回、敢えてこういう形の本にした。これは若い世代に向けた戦争と平和のためのメッセージである。祈りを込めた作品だ。彼 . . . 本文を読む
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桜庭一樹『名探偵の有害性』

2025-03-21 04:34:00 | その他
桜庭一樹が東京創元社だからと、ミステリ仕立ての作品にチャレンジした探偵もの。90年代、名探偵四天王のひとりと呼ばれた男が20年振りに帰ってきた。鳴宮夕暮は50歳。30年前、大学の同級生である五狐焚風の助手としてふたりで難事件を解決していた。ふたりは再びあの頃の推理を検証するための旅に出る。50になり、しょぼくれた中年なったふたりは旅することであの日の自分たちと向き合うことになる。20歳の2人が解決 . . . 本文を読む
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吉野真理子『やなやつ改造計画』

2025-03-20 04:53:00 | その他
この作品を読む直前に読んだ『天使は見えないから、描かない』があまりに生々しく傷ましい作品だったから今度は楽しい作品を読みたかった。というわけでこの吉野真理子。彼女なら大丈夫。もちろんわかっていると思うけど、島本理生の小説は傑作である。一見するとやな小説だが、やなやつではない。9歳の初恋を成就させる話だ。しかも相手は18歳年上の父親の弟。だから2等親。結婚は出来ないし、親子ほど年も離れている。昨日読 . . . 本文を読む
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島本理生『天使は見えないから、描かない』

2025-03-19 08:33:00 | その他
叔父と姪。18歳年上の親戚である男と関係を持つ33歳の女性。歪つな恋愛を描く島本理生の新作は何故か清らかな空気が流れている。インモラルではない。もちろん純愛なんかじゃないけど。最初の『骨までばらばら』を読み終えた時、これはすごいわ、とため息をついた。つまらない恋愛小説とはうんでんの差を呈する情け容赦ない静けさ。これはいったい何なのか。ラストの離婚後の財産分与について話合うという展開に瞠目する。普通 . . . 本文を読む
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増山実『あの夏のクライフ同盟』

2025-03-19 05:27:00 | その他
僕と同い年の増山実によるあの頃を思い出す青春小説。彼の方が1年上かもしれないがほぼ同じ時を過ごしている。ここで懐古的に描かれる世界は70年代前半。あの頃のアイテムの数々が懐かしい。天地真理と桜田淳子や中二時代と中二コースとか、拓郎にこうせつ。あの頃が甦る。前作『今夜,喫茶マチカネで』に続いて今回も彼はまた優しい世界を満喫させてくれる。1974夏。4年に一度のワールドカップが開催される年。彼らは中学 . . . 本文を読む
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砥上裕將『11ミリのふたつ星』

2025-03-17 05:46:00 | その他
『7.5グラムの奇跡』に続く「視能訓練士、野宮恭一」シリーズの第二作。最初はなんだかあまり心地よくはないから「前作の方がよかったなぁ」なんて失礼な感想を抱いて読み始めた。灯ちゃんのお母さんである夕美さんの頑なさがそう思わせたのだ。娘の斜視を認めたくない。だから治療はいらないという姿勢が不快だった。だけど野宮はそんな彼女を時間をかけて説得し訓練をスタートさせる。丁寧に書かれてあり、心に沁みいる。主人 . . . 本文を読む
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村上春樹『午後の最後の芝生』

2025-03-16 21:33:00 | その他
今頃になってこの作品が単独で一冊の本となって発売された。初期の村上春樹の傑作短編集『中国行きのスロウボート』に収められた『午後の最後の芝生』である。安西水丸によるたくさんの挿し絵とのコラボ。42年前の作品を再びこういう形で出版する。村上春樹と10年前に亡くなっている安西水丸との黄金コンビによるコラボが実現する。水丸さんによる絵がいい。久しぶりに読んだ小説は(出版された時以来だからもう40年以上前! . . . 本文を読む
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村山早紀『風の港 再会の空』②

2025-03-15 06:17:00 | その他
最後まで読んで今、本を閉じた。最初の2篇については先に書いたから残り3篇の話を書こう。なんと3話には魔法使いが、4話に至っては神様までもが登場するのだ。もう有り得ないけど、空港でならあり得るかもしれない。そんな不思議がここにはある。だってそこはあんな大きな船が空を飛ぶ場所なのだからどんな奇跡が起ころうとも信じられる。今回の早紀さんはいつも以上に大胆な展開をサラリとする。そして最後には当然のように猫 . . . 本文を読む
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砂村かいり『コーヒーの囚人』

2025-03-15 04:50:55 | その他
この作者の本は初めて読むが、これは好きなタイプの小説だ。彼女はこれまでに5冊の長編を出版しているみたいだが、これが初めての短編集。読んでいて、なんだか不穏な気分になる。今ある幸せがとても儚いもので、すぐになくなってしまいそうで。だけど、なくならない。あるいは、なくなっても困らない。変わらないままだとしても、何かが変わっている。知らない間に。そんな気分がいずれの作品にも漂う。コーヒーが媒介になる。あ . . . 本文を読む
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村山早紀『風の港 再会の空』

2025-03-14 03:57:00 | その他
もう一度『風の港』を読みたいな、と思っていたら村山早紀さんは再びこの小説を書いてくれた。もちろんこれだけではない。彼女の作品はみんな続くのを期待させるものばかりだ。だけど安易にシリーズ化して欲しいわけではない。もう会えないかもしれないけど、もし奇跡的に逢えたならうれしい。そんな気分にさせられる作品なのである。今回の最初の一作がまさにその気分を代弁してくれる作品だった。これも奇跡かもしれない。『十二 . . . 本文を読む
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