
こんなにも単純でおバカなタイトルを堂々とつけたホラー小説なら受けて立って読んでみようか、と思った。別に受けて立つ必要はないけど、ね。まぁつまらなかつたら途中で止めればいいし、という軽い気持ちで手にした。それに映画界を舞台にした作品である。少し気になったし。
ということで、読み始めたのだが、聞きしに勝る(というか、何も聞いてないけど)エグさ。こんな荒唐無稽な小説でいいのか、と呆れる。まぁエンタメ・ホラー・ミステリーだからありなのか、なんてね。
明らかに東映をモデルにした映画会社、主人公の(冒頭で死ぬけど)巨匠監督はたぶん、長生きした深作欣二か? (深作ファンの方、ごめんなさい!)昭和の巨匠で古いタイプのワンマン監督、若くして巨匠と祭られ、平成に入ってからは泣かず飛ばずで、25年のブランクを経て令和に入って82歳で新作を撮る。もちろんデジタルではなく35ミリのフィルム撮り。直接製作費15億の中途半端な大作、そこに中国資本が入っている、とか、昭和と令和が融合している。
設定はなるほどとは思うけど、試写室での0号試写を見た44人が映画を見た後死ぬというあり得ない展開から始まる謎解きホラー。
だけど謎解きではない。だって犯人は死者だなんて、それはない。怨念の籠った映画が人を殺すというのもあんまりな展開。啞然とするしかない。映画を見た人は死ぬから、何としても劇場公開を阻止しないとならない。フィルムで撮られた映画の原盤をデジタル変換して映画館に配信される前に燃やすための戦いを描く終盤クライマックスは(バカバカしくて、呆れてしまって)手に汗握らない。久々にトホホ小説を読んで堪能した。(笑)
モラハラ、セクハラ、パワハラなんて当たり前だった映画界を描くってところはリアルかもしれないけど、取って付けたようなそこよりも、まずは「ここまで荒唐無稽な小説をよく書いたな」と感心した。