※ ドイツ ‐ カッセル/ヴィルヘルムスヘーエ城・古典絵画館編 (4) ‐ 中欧美術館絵画名作選 (107)
王の画家にして画家の王と呼ばれ、諸外国までその名声を轟かせたバロック期を代表する画家ピーテル・パウル・ルーベンス(1577-1640 )。
その彼の寓意的神話画のひとつで長い題がつけられた 「ケレスとバッコスがいないとヴィーナスは凍えてしまう」(1612-1613年頃/140.5×198.5cm)が今回の作品。
作品の前に彼は、1600年からイタリアの<マントヴァ>はゴンザーガ家の宮廷画家に雇われ、その8年間の滞在中に、ローマでミケランジェロ(1475-1564 )の肉体表現、ヴェネツィアでティツィアーノ(1488-1576 )などのヴェネツィア派から豊かな色彩による画面構成を学んだとされている。
本作で彼は、古代ローマの吟遊詩人テレンティウスの有名な一節を題名に、愛を司る女神ヴィーナスと息子キューピッドは、美食を意味する豊穣の神ケレスと酒神バッコスがいなければ、その愛も醒めてしまうという寓意を描いている。
ところで彼、ローマなどで古代の彫刻に完璧、かつ理想的な美の性質を知ったとされ、それは人間らしくなければならないとしたらしい。
なるほど、肉体は形式的には彫像と見紛うほどでありながら人間としての生臭さがある。
余談だが、豊穣の神ケレスとはギリシャ神話でデーメーテールのこと。
デーメーテールの娘コレー、ペルセポネーが、冥界の王ハーデースに連れ去られる場面を描いたレンブラント(1606-1669)の 「<ペルセポネーの略奪>」でも登場している。
ちなみにルーベンス、寓意的神話画の傑作 「凍えるウェヌス」(1614年頃/142×184cm/アントウェルペン王立美術館蔵)を描いている。
本作と同様に、美食と酒がなければ醒めてしまうという寓意を描いたものであるが、こちらは豊穣神ケレスと酒神バッコスは描かず、実際に女神ヴィーナスがエロス・キューピッドと共に凍えている姿が描かれている。
とまれ、彼は騒々しい豪華な食事の場面よりも、むしろ抑制された、節度ある喜びの場面として描いたとされているが、如何にも彼らしい豊満な女神であることに変わりはないようだ。
Peter & Catherine’s Travel. Tour No.1417
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