※ NY/フリック・コレクション編 (3) ‐ DC&NYの美術館にみる泰西名画選 (16)
マンハッタンのアッパー・イースト・サイド、セントラル・パークの向かいにフリック・コレクションがある。
ここに<自画像の画家>ともされるレンブラント・ファン・レイン(1606-1669/オランダ絵画黄金期)の1650年代における傑作のひとつ 「自画像」(1658年)が架る。
本作が描かれたのは、彼が破産の申請をし、財産のすべてを競売によって処分した頃と重なる。
それゆえか、借財の労苦、金銭の束縛から解き放たれ、精神的な自由を得たある種の余裕が感じられる。
レンブラントは自身の自画像において、傑作 「<聖パウロに扮した自画像>」(1661年/アムステルダム国立美術館蔵)や 「<ゼウクシスとしての自画像>」(1665-69年頃/ヴァルラフ=リヒャルツ美術館蔵)など、歴史上の人物や聖人、哲学者などに扮している。
本作においても、そのことが研究者によって考察されているとか。
が、そのことは別にして、彼が身にまとう豪華な衣装は、今まさに彼の手許から離れていこうとしている物で、それは、過去との決別の意思の表れであった、ともされている。
レンブラントの表情に感傷は見られない。
真一文字に結んだ唇、力強く見つめる視線、波乱の生涯に聊かの悔いもないと決めた男の矜持、潔くも格たる自己凝視だけがそこにある。
午後の静かな館内でこの絵に見入るカタリナ を想い浮かべ、<最愛の妻サスキア>を失った彼には、もう何も失うものがなかったのか ・・・、あらためてそんなことを思う。
Peter & Catherine’s Travel. Tour No.1277
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます