※ ドイツ ‐ フランクフルト/シュテーデル美術研究所編(5) ‐ 中欧美術館絵画名作選(118)
16世紀初頭というから盛期ルネサンス、ヴェネツィア派の画家<ジョルジョーネ>(1477-1510)の頃に活躍したらしく、その出身地からバルトロメオ・ヴェネト(生没年不明)と呼ばれたらしい。
その馴染み薄いヴェネツィア派の画家が 「理想の女性像」とも称される 「フローラ」(1520年/43.6×34.6cm)を描いた。
本作のテーマが、花と春と豊穣を司る女神フローラだというのは、月桂樹の草冠を被り花を手にしていることから想像できる。
フローラといえば、同時代の巨匠ティツィアーノ(1488-1576)の 「<フローラ>」(1515年頃/ウフィツィ美術館蔵)のように官能的な容姿が思い浮かぶが、本作はどちらかと言えば、痩せぎすの中性的なイメージを与えている。
モデルはどうも、ボルジア家出身のフェラーラ公妃ルクレツィア・ボルジア(1480-1519)らしい。
後に、ローマ教皇アレクサンデル6世となるロドリーゴ・ボルジアが愛人に産ませた娘で、腐敗と不品行に堕ちた一族の中で、政略結婚に弄ばれ、殺めた相手は数知れず、希代の悪女ともされたとか。
本作に戻って、そのフローラが手にしているのが、“ 真実と希望 ” を意味する 「アネモネ」、“ 貞節と誠実 ” の 「マーガレット」、そして “ 中傷・嫉妬 ” の 「金鳳花」と思惑ありげ。
彼女がモデルだとすれば、聊かこじつけっぽいが、画家がフローラにこの花を持たせた趣向が解らなくもなく、詰まるところ、悪女と聖女はコインの裏表、男次第でどちらでも、とは、ちと穿ち過ぎ?
Peter & Catherine’s Travel. Tour No.1450
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