※ ドイツ ‐ ベルリン/ゲマルデ・ギャラリー編 (9) ‐ 中欧美術館絵画名作選 (61)
今、ブリューゲル展が東京で開催、彼の傑作 「<バベルの塔>」(1563年以降/ロッテルダム・ボイマンス美術館蔵)が来ている。
彼のもうひとつの 「バベルの塔」(1563年/ウィーン美術史美術館蔵)のイメージがあって、ボイマンス版を前にした時、大よそ1/4のサイズに 「あれっ?」と思ったことを憶えている。
いきなり話はそれたが、その初期ネーデルランド絵画の巨匠ピーテル・ブリューゲル(1525-1569)の 「ネーデルランドの諺」(1559年/117×163cm)、小編<再登場>である。
本作、ネーデルランドの諺がこれでもかと描かれてい、翌年に描いたとされる 「<子供の遊戯>」(1560年/118×161cm/ウィーン美術史美術館蔵)と並んで、彼が好んで描いたとされる群衆構図の作例の典型とされている。
諺とは “ 古くから言い伝えられてきた、教訓または風刺の意味を含んだ短い言葉 ” (大辞泉)とあるが、彼は80余り、100以上の説もある。の諺を取り上げ、その言い回しをイメージに置き換えることによって様々な人間の愚行を形象化、ユーモラスに笑い飛ばしている。
そのひとつひとつを絵解きする知識は持ち合わせてないが、「新潮美術文庫・ブリューゲル編」を借りてそのいくつか(下:部分)を紹介する。
画面中央、「夫に青外套を着せる妻」、裏切りや欺瞞、不義を意味する青い外套を老夫に着せようとする妻を描いている。
ちなみにこの場面を指して、本作を 「青い外套」と称していた時期もあったとか。
その手前、事が起こった後に対策を立てる 「子牛が溺れた後に穴を塞ぐ」、その左手には、同じ行為でも片方は有益で片方は無益を意味する 「一人は羊の、一人は豚の毛を刈る」などが、微細にこれでもかと描かれている。
これらの愚かな行為を象徴するのが、左端の十字架を下に付けた倒錯した世界を描いた 「地位、秩序、社会の逆転」で、大ブリューゲルが好んで描いたとされる 「<さかさまの世界>」を意味しているのだとか。
ところで、本作の前にはそれぞれの場面を絵解きする説明板、ドイツ語で珍紛漢紛だけど。が律儀に置いてあるのが如何にもこの国らしい、と変なところで感心した。
Peter & Catherine’s Travel. Tour No.1308