西宮図書館の本館、夙川公園と酒蔵通りが交わるところにあることは、<痕跡本が人気・・>で書いた。
その図書館から西へ半キロほども行ったところに大谷美術館がある。
年末にカタリナが、年初の茶会の場所を探していてこの美術館の名前が出た。
一度訪れたことがあるが、梅原龍三郎が架かっていたような覚えもあって、なんとも頼りない。
正しくは、西宮市大谷記念美術館(写真上)と呼ぶ。
松竹を創業した大谷竹次郎に係わる美術館とばかり思っていたのだが、かつて鉄鋼王と称された大谷米太郎の弟で、昭和電極社長だった大谷竹次郎が、長年にわたって収集した絵画などを、宅地とともに市に寄贈したということを、恥ずかしいことに初めて知った。
ちなみに、兄米太郎ゆかりの鎌倉大谷記念美術館、名前のとおり鎌倉市に在るということも今回知った。
今、特別展「<新春日本画の美>」(2月14日まで)を催していて、今季初めて、六甲の頂きが雪で粧った日、図書館から足を延ばした。
広くはないが清流が落ちる日本庭園が、ロビー南面一杯の窓から望める。
案内によれば、この美術館が所蔵する68点を三部構成で展示とあり、他の美術館を頼らず、これだけの特別展を開催する力量は評価できる。
日本画と洋画の部では、案内の表紙を飾る前田青邨「薔薇」(写真中)と杉山寧「鴨」が。
山水画を中心にの部では、山下摩起の「鐘馗」、日本の四季の部では、濱田観「白木蓮」と榊原紫峰「桃小禽」に印象が残った。
日本の四季の部に、横山大観「若葉」があり、その前で暫し足を止め見入った。
その「若葉」から27年後の昭和16年頃、戦時色いよいよ濃くなる時代に描かれた、国学者本居宣長の、“ しき嶋のやまとごゝろを人とはゞ朝日にゝほふ山ざくら花 ” のオマージュ、金地に燃える朝日と山桜が描かれた、「大和心」が最初の展示室に。
花鳥風月などを高雅に描く日本画の大家の、国粋主義者として国威を発揚するというもうひとつの顔をこの作品に見、居たたまれぬ思いでこの絵から離れた。
日本庭園では、盛りの蝋梅の傍らで梅がそろそろという風だった。
ところで小ブログ、拙文を重ねて100号、ご愛読感謝。 (
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