「白い月」
わかかなしきソフイーに
白い月が出た、ソフイー、
出て御覧、ソフイー、
勿忘草(わすれなぐさ)のやうな
あれあの青い空に、ソフイー。
まあ、何んて冷(ひや)つこい
風だろうね、
出て御覧、ソフイー、
綺麗だよ、ソフイー。
いま、やつと雨が晴れたーー
緑いろの広い野原に、
露がきらきらたまつて、
日が薄すりと光つてゆく、ソフイー。
さうして電話線の上にね、ソフイー。
びしよ濡れになつた白い小鳥が
まるで三味線のこまのやうに溜つて、
つくねんと眺めている、ソフイー。
どうしてあんなに泣いたのソフイー、
細かな雨までが、まだ、
新内のやうにきこえる、ソフイー。
ーーあの涼しい楡の新芽を御覧
空いろのあをいそらに、
白い月が出た、ソフイー、
生きのこつた心中の
ちやうど、かたわれでもあるやうに。
目で読むと「ソフイー」のリフレインが多少ひつこいのではないかと感じましたが、日下武史さんの朗読を聞くと、このために催眠術的な効果があって心地よいです。現代詩にはない、音楽的な詩です。
さて、この詩の背景にある、本当のことは知りませんが、今はもうそこにいないソフィーに、あたかもそこにいるように、白い月の情景を切なく語りかけているような、詩として読みました。
(実際に一緒にいる恋人に、今見ている情景をこんなに細々述べるのは不自然ですから)
自分の心情をまったく述べないのに、女への哀切が伝わってくるのは見事としか言いようがありません。
最期の二行は白秋の実感ではないかと思います。(まこと)
わかかなしきソフイーに
白い月が出た、ソフイー、
出て御覧、ソフイー、
勿忘草(わすれなぐさ)のやうな
あれあの青い空に、ソフイー。
まあ、何んて冷(ひや)つこい
風だろうね、
出て御覧、ソフイー、
綺麗だよ、ソフイー。
いま、やつと雨が晴れたーー
緑いろの広い野原に、
露がきらきらたまつて、
日が薄すりと光つてゆく、ソフイー。
さうして電話線の上にね、ソフイー。
びしよ濡れになつた白い小鳥が
まるで三味線のこまのやうに溜つて、
つくねんと眺めている、ソフイー。
どうしてあんなに泣いたのソフイー、
細かな雨までが、まだ、
新内のやうにきこえる、ソフイー。
ーーあの涼しい楡の新芽を御覧
空いろのあをいそらに、
白い月が出た、ソフイー、
生きのこつた心中の
ちやうど、かたわれでもあるやうに。
目で読むと「ソフイー」のリフレインが多少ひつこいのではないかと感じましたが、日下武史さんの朗読を聞くと、このために催眠術的な効果があって心地よいです。現代詩にはない、音楽的な詩です。
さて、この詩の背景にある、本当のことは知りませんが、今はもうそこにいないソフィーに、あたかもそこにいるように、白い月の情景を切なく語りかけているような、詩として読みました。
(実際に一緒にいる恋人に、今見ている情景をこんなに細々述べるのは不自然ですから)
自分の心情をまったく述べないのに、女への哀切が伝わってくるのは見事としか言いようがありません。
最期の二行は白秋の実感ではないかと思います。(まこと)
この詩の「ソフィー」のリフレインは、きっと朗読したら効果的やろうね。これはきっと「ソフィー」ということばの響きとか、意味とかがこの詩にぴったりあっているのだと思う。「エリザベス」ではあかんね!
恵子でも尚子でも美子でもあかん。
元気すぎる。
笑