※井上さんがレポートを書いてくださいました。
3月6日、天気が心配されましたが、晴れ間もみえはじめた午前9時過ぎ、道の駅に集まった3名で乙女高原に向かいました。
まず、通称カエル池と呼ばれる小さな池がある地点に立ち寄ってみました。例年ならヤマアカガエルが産卵しているのですが、昨年夏以来、水がなくなってしまい、カエルが卵を産める状態ではありません。これまでこの場所で産卵していたカエルはどこにいったのかなと心配していると、かすかにカエルの鳴き声が聞こえてきました。岩の下の方はしめっているので、そこにいるのでしょうか。でも水がたまっていなければ、産卵はできません。心配です。
次にカツラの大木のある地点に寄ってみました。カツラの赤い芽吹きはまだですが、株立ちした姿がすばらしいです。
(写真 大嶽さん)
近くには幹のほとんどが空洞になって、表皮だけで生きているような、そしてコケやシダの住処にもなっているトチの古木もあります。
(写真 大嶽さん)
他にもいろいろな落葉樹が春空に向かって伸びていて気持ちがよい場所でした。スミレやハナネコノメも咲く場所ですが、まだ花の姿はありません。南斜面にミツバツチグリ、タチツボスミレ、レンプクソウなどの小さな葉が出始めたばかりでした。ヤマブドウの幹が太くなって10mくらいもありそうな高い木の枝にまで伸びていて、どのようにして登っていったのか不思議です。
車を止めた林道わきに鹿の頭骨が落ちていました。また落葉の下にはいろいろな植物の根生葉も出始めていました。そして林道のあちこちにはハンノキの雄花が赤く垂れさがっていたり、バッコヤナギが銀色の花芽をのぞかせていたり、シラカバやカエデの枝先も赤くなっていたりと、春の気配が感じられます。先月は凍っていたところのあった林道もほとんど解けていました。
木道の湿地帯でヤマアカガエルが産卵しているか確認しましたが、まだ卵は見あたりません。下の沢の方からまだ練習中のようなミソサザイのさえずりが聞こえてきました。前日、平地では雨が降りましたが、乙女高原も雪ではなく雨だったようで、コケの緑がとても美しかったです。いろいろな種類のコケがあり、さながら小さな森のようです。湿地帯から遊歩道を少し歩きました。カラマツなどに付いていたサルオガセがいくつも落ちていました。多くのササがシカに食べられていて、シカ糞もいっぱい。
北斜面側の湿地はまだ凍っていて、植原さんはその上を歩いて楽しんでいました。カラ類の鳴き声がしています。ここにもいろいろなコケがありましたが、コケの一種のフロウソウの中に、黒くて細い棒状のものがたくさんあって、芽なのか、枯れたものなのか、今後の宿題としました。
遊歩道にはヤマドリの糞もありました。
昼近くに乙女高原に到着。この日はとても暖かくて、看板裏の温度計を見ると12℃。少し早めの昼食をとってから、草原を歩きました。雪はほとんど解けていて、日陰に斑状に残っているくらい。草原内の土の小山はモグラの仕業でしょう。刈り残りの植物のドライフラワーを観察しながら斜面を登って行きました。歩いていると暑いくらいです。森のコースの立ち枯れてしまったモミの大木の枝がたくさん地面に落ちていて、幹にはキツツキがあけた小穴がたくさんあります。植原さんが数えると100以上ありました。
森の中に骨が1本落ちていました。何かの動物が鹿柵内に持ち込んだものでしょうか。
展望台に到着。富士山は雲の中で、頂上がわずかに見えたくらい。日当たりのよい斜面に何かないか探すと、キジムシロ、タチツボスミレ、ヨモギなどの小さな葉を見つけました。その後、ブナじいさんの所に行ってみました。葉を落としているので、樹形がよくわかります。枝がくねくねと曲がっている様子をじっくり観察しました。またなぜここにこのブナの大木が1本残されたのかのレクチャーを植原さんがしてくれました。
水が森林道に出て林道をロッジまで戻ることにしました。ゴジュウカラのフィッフィッという鳴き声がよく聞こえてきます。道路に黄色いものが落ちているので、上を見るとツルウメモドキがあります。よく見ていくと、ミズナラの幹に藤蔓のような太い木が巻きついていて、上から辿ってみるとツルウメモドキの木のようです。あまり太いので、植原さんがメジャーで測ってみると、直径9cmという太さで、ツルウメモドキがこんなに太くなるとはびっくりでした。しばらく歩くと、少し開けた所から甲斐駒ヶ岳や仙丈岳、鳳凰三山が見えました。
斜面の上に立ち枯れたモミの木が見えたので、森のコースの枯れたモミか、確認しに斜面を登ってみると別の木でした。森のコースの木より前に枯れてしまったようで、枝はほとんど落ちてしまっていました。尾根上に出てしまったので、再び展望台に戻ると、小鳥の声がします。ハンノキにエナガが数羽、モミの木にシジュウカラがいました。鹿柵のゲートを少し入った遊歩道に黒いキツネの糞がありました。キツネは鹿柵の隙間から出入りできるようです。
草原のコースを下っていくと、ミズナラの幼木に丸い虫こぶがついていました。途中のアカマツの所ではコガラも観察できました。その後、草原を横切って、谷地坊主を見に行きました。枯れてボサボサ頭のヤチボウズがきれいに並んでいます。気のせいか大きくなったような……。コケの花が咲いているというので、見ると胞子体が出ています。触ってみると粉のような胞子が飛びました。粉を飛ばして楽しんだり、写真に撮ったりして、ロッジに戻り、乙女高原を後にしました。
塩平への林道を下り、途中のマンサクを観察。咲き始めていました。芯の部分が赤く細長い花びらは黄色です。これを祭などで見かける巻き戻し笛(ピロピロ笛)みたいと言うのは植原さん。本当に春一番に咲く、まず咲くマンサクです。これからアブラチャンやダンコウバイなども咲き始めるでしょう。春の花は黄色が多いですが、これは昆虫の目に付きやすい色で、昆虫に来てもらって受粉をしてもらうための花の戦略なのだそうです。
とても暖かく、春めいてきて、小鳥たちは活発に活動し始め、植物の芽吹きなどたくさん春の気配を感じたり、動物たちのフィ-ルドサインもいろいろ見ることができた楽しい一日でした。
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