2018年03月03日(土) 山本さんによるレポート
3月3日の観察交流会に道の駅に集まったメンバーは総勢8名で、車2台で乙女高原に向かいました。大分暖かくなってきたからそろそろ活動をとおっしゃって参加してくれた方もいましたが、2日前に降った雨が山の上では雪だったようで、どれほど積もったか懸念されます。
林道沿いではヤマアカガエルも産卵を始めている時期とのことで、2か所の観察ポイントに立ち寄りました。うち1か所目はここ2~3年産卵が確認できていないようですが、もう1か所の小さな遊水池では表面が凍っていたものの、氷の下に黒々とした卵塊がたくさん見られました。7~8腹はありましたでしょうか。植原さんが2下旬に乙女高原に行かれた際立ち寄った時にはあったという卵塊が無くなっていました。オタマジャクシになってしまった様子もなく、どうなってしまったのでしょう。ミステリーです。
柳平から先の林道には雪が残って凍結していましたが、車でそのまま進むことにしました。ときどき車の腹が雪でこすれるといった状態でした。焼山峠に近づくと林道沿いでカラスが群れて騒いでいました。焼山峠を過ぎた先でもやはりカラスが騒いでいたので、車を止めてその場に近づいてみると、果たしてシカの屍骸です。ほとんど骨だけになってしまっていました。
日当たりも良く道幅も広かったので、そこに車は置いてその先は歩くことにしました。湿地帯を過ぎたところでもカラスが群れて騒いでいて、そこでもシカが死んでいました。腹部は皮が剥かれてしまって内臓が見えてきていましたが、頭部から背中にかけてはそのままの状態で、死後あまり経ってないようでした。すぐ上の林道には鮮血と言っていい血が残っていて、事件はここで起きたのでしょうか。シカの死体がなかったら110番するような現状でした。
雪をかぶったままのヤチボウズの湿地に立ち寄ってからロッジに到着したのは11時半頃でした。早目のお昼をとることにしました。青空で風もなく日があたって暖かです。我々がさっさとお昼をとっている間も、植原さんは気象観測用のデータロガーの交換作業をされていました。昼食後は柵の中に入り、森のコースを歩いて富士山を見に行くことにしました。20~30㎝深さの雪を踏みながら先頭を歩いていると、冬季オリンピックのスケート競技のパシュートを思い出しました。パシュートでは風の抵抗を受ける先頭は疲れることから順次入れ替わりますが、先頭で雪を踏み固めていくのは相当疲れます。
富士山は良く見えていて疲れも癒されます。ヨモギ頭の三角点まで上がると木間に南アルプスや八ヶ岳が良く見えていました。柵内に戻り、ササの状態が柵の内外で違うのを観察すると、柵の外ではシカがほとんど食べつくしてしまっていました。2月にはそれほど食べられた形跡はなかったので、この1か月の間に様子が変わってしまったようです。ツツジコースに出ると吹き溜まりになっていて、膝まで雪にはまってしまい歩くのが大変でした。車に戻る時にも相変わらずカラスの群れは食事中で、内臓も大分食べられたようです。
帰りの林道ではヤドリギの場所で車を止め、ヤドリギのその後の様子を観察しました。黄色やオレンジの実の数が減っているように思えました。岡崎さんが土手のコンクリート壁にヤドリギの種の混じった糞がへばりついているのを見つけました。1か所だけでなく何か所もついていました。レンジャクが実を食べに来て糞をしていったのでしょうか。このあたりにはヤドリギがたくさん見られます。行きに立ち寄った湧水池にも寄りました。表面の氷はすっかり溶けていて、しばらく観察していると池の中の落ち葉の陰からカエルが何匹か顔を出してくれました。
道の駅に戻って解散する段になってから、駐車場脇で咲いていたホトケノザを見た植原さんから閉鎖花もあるねと教えていただき、どれが閉鎖花?ということでまた観察会が始まってしまいました。 この時期乙女高原には雪がまだたくさん残っていて、冬の営みの厳しさと春の訪れを実感できる観察会ができました。
※乙女高原自然観察交流会に継続して参加してくれている岡崎さんから観察交流会についての感想コメントをいただきました。
年間を通して同じフィールドを多面的に自然に触れて観察できることが一番のお勧めです。
自分の知らないことや分からないことは山ほどあるわけです。
1つでも気付くことができるだけでも大切だと思っています。
「見る・知る・理解する・分かる・判る」を頭の片隅に置いて今後も楽しみたいと思います。
※北谷さんからも感想コメントをいただきました。
久しぶりの乙女高原に朝から期待が膨らむ観察交流会。下界は春の陽気ですが乙女高原はまだまだ冬。四季の森広場から乙女高原までの林道歩きで、この日はなんと2頭もシカの屍骸に遭遇。これまでも何度か骨は見たことがありましたが、生々しい屍骸を目にするのは初めてでした。獲物を狙ってトビが空高くを旋回し、トビに追われたのかカラスがギャーギャー鳴きながら飛び交っていました。トビは何処から飛んできたのか次々と集まり多い時で20羽くらい数えることができました。こんなに多くのトビが集まってくるのを見るのも初めてで、冬山のドラマにテンションが上がりました。
そんなドラマをよそに、音を立てて木をつつくコゲラや、雪解け水が流れ落ちる場所で水を飲むコガラなど、いつも通りの穏やかな光景は心和むものでした。
ヤチボウズの湿地辺りにはシカと思われる足跡が道路を横切り流れを越えて続いていました。湿地のヤナギは芽鱗が取れて白い綿帽子が覗いていて遠目にもとてもきれいでした。良いお天気だったので、青い空に白い雪、茶色い木々のコントラストが素晴らしかったです。
お昼を食べた後は、森のコースからヨモギ頭まで歩き展望を楽しみました。ズミもツノハシバミもウリハダカエデもまだ冬芽は硬く、日当たりを探してもスミレの葉は見つかりませんでした。昆虫も見かけませんでしたが、地面を黒い蜘蛛が這うのを見つけ、この時期は何を食べているのだろう?と思いました。
往きに立ち寄ったカエルの産卵場所に帰りも寄りましたが、今度は可愛らしい鳴き声が聞こえ、しばらく目を凝らして探すと姿を見ることもできました。
冬でも雪の中でもたくさんの発見があって、今回も楽しく充実した観察会でした。