乙女高原ファンクラブ活動ブログ

「乙女高原の自然を次の世代に!」を合言葉に2001年から活動を始めた乙女高原ファンクラブの,2011年秋からの活動記録。

2018年12月の自然観察交流会

2018年12月01日 | 乙女高原観察交流会

 

山本さんが文章と写真を提供してくださいました。

牧丘道の駅に集合したのは井上さん、岡崎さん、鈴木さんと私の4人、午後3時には戻ってきたいという合意のもとで、私の車1台で出かけることにしました。

 

 【ヤドリギ】

 

杣口林道の途中で車を止めて、まずはヤドリギの観察から。ここでは黄色い実と赤い実の両方を同時に見ることができます。赤い実はまだオレンジ色で、これから熟していくともう少し赤みが増してくるかと思います。鳥のレンジャク仲間が実をついばみに来るのを見てみたいとは思いますが、このあたりに渡って来る時期がわかりません。今年はじめに山中湖畔に見に行った時には1月下旬から2月上旬にかけてヒレンジャクが渡って来ていました。そこでは毎年大勢の鳥写真家たちが撮影待ちしていますので、見逃すことはないでしょう。

 

草刈り後の乙女高原は散髪終えた後のさっぱり感を感じました。昨年はネズミの巣探しをしましたが、来年の乙女高原フォーラムでの講演が藤井久子さんのコケの話でもあり、今年塚田さんが調査してくれたコケの名札を頼りにコケを観察しようと森のコースを歩くことにしました。

 

 【ハイゴケ】

 

さっそく草地にもコケがありました。花の時期だと誰にも気づかれずにいたと思いますが、草刈り後だと地面に青々としていて良く目立ちます。コケの名札がありました。ハイゴケです。ルーペを使って細部を観察します。そして井上さんが持ってきた図鑑を調べてくれます。日当たりの良い至るところで見られるポピュラーなコケで、葉先が鎌状に曲がっていて、乾くと枝が内向きにカールするのが特徴とあります。

 

 【シッポゴケ】

 

少し進んでミズナラの広場のあたりに行くといろいろコケが出てきます。地上のあちこちに見られるのはシッポゴケです。図鑑によるとこれもポピュラーなコケで、近縁種のオオシッポゴケやカモジゴケとの区別が初心者には難しいとあります。茎の長さがシッポゴケとカモジゴケは10㎝ほどと長く、オオシッポゴケが名前とは裏腹に5㎝ほどと短く、シッポゴケの仮根は白色で、オオシッポゴケとカモジゴケの仮根は褐色とあります。またシッポゴケとカモジゴケの葉は針状に細いが オオシッポゴケは葉先まで一定の幅があり、乾くとシッポゴケの葉は茎に直角に向きはバラバラで、オオシッポゴケやカモジゴケは同じ方向に鎌状に曲がると書かれていました。近縁種が出てきた時に見分けられるでしょうか。

 

   【ミノゴケ】

 

   【ヒムロゴケ】

 

    【コツボゴケ】

 

ミズナラの樹幹にも名札が付いています。ミノゴケとヒムロゴケでした。ミノゴケは茎が岩や樹幹を這い、1㎝ほどの枝をたくさん立ち上げ葉を密集させていて、葉は乾くと褐色がかり丸まって粒状になるとあります。またヒムロゴケは岩や樹幹を這う一次茎とそこから立ち上がった二次茎があり、一次茎には小さな葉が鱗状に付き、二次茎には樹状に枝や葉を伸ばしていて、乾くと二次茎がカールするので羽毛のように見えると図鑑に書かれていました。幹の地際近くにもう1種、コツボゴケもありました。胞子体の朔が提灯タイプで、直立茎と匍匐茎を併せ持ち長く伸びて先端に子株を作って群落を形成するツルチョウチンゴケの仲間で、葉の上半部に鋸歯があり葉先が鋭頭なのが特徴です。近縁種のツボゴケと専門家でも見分けが困難とありますが、ツボゴケは雌雄同株でコツボゴケは雌雄異株なので、造卵器と造精器が作られる時期に観察すれば判別できるかもしれません。同定するには時期を変えて何度も足を運ぶ必要があり、観察交流会の度ごとに観察を繰り返すことになりそうです。

 

樹幹や足元のあちこちにコケがあって、これは何々、あれは何々と、同じものか違うものか観察していると先になかなか進みません。

 

     【ヒノキゴケ】

 

   【ナミガタタチゴケ】

 

   【ハミズゴケ】

 

少し上がった木陰の林床にはさらにコケも多く見られ、新しい名札が何種類かありました。まずはヒノキゴケですが、ヒロハヒノキゴケという近縁種もあるようで、見分けるには朔柄が茎の途中から出ていればヒノキゴケで、茎の基部からだとヒロハヒノキゴケとのこと、コケの同定には胞子体を観察することも必要になります。続いてナミガタタチゴケです。スギゴケ科の1種で、葉は波打つような横ジワがあり乾くと縮れ、朔は細長く、他のスギゴケ科の仲間にある朔帽の毛がこのコケにはないのが特徴です。そしてコケのようには見えないハミズゴケがありました。これもスギゴケの仲間ですがまったく似ていません。配偶体としての葉が退化してほとんど見えない、だから“葉見ず苔”で、長い朔柄をもった胞子体でコケとわかります。胞子体の下で藻類のような青黒としたマット状のものは原糸体で、発達しない配偶体の代わりに光合成をしていると図鑑に書かれていました。

 

  【トヤマシノブゴケ】

 

   【カモジゴケ】

 

  【コセイタカスギゴケ】

 

   【コスギゴケ】

 

シダ植物を小さくしたようなといったトヤマシノブゴケ、それにシッポゴケと見分けが難しいと書かれていたカモジゴケがありました。カモジゴケの特徴を見分けるために細部を観察します。見分けられるようになるには何度も何度も観察する必要がありそうです。スギゴケ仲間のコセイタカスギゴケとコスギゴケもありました。コセイタカスギゴケの葉は鋸歯があり幅があるのが特徴で、コスギゴケの葉にも鋸歯があり乾燥すると不規則に縮むのが特徴とありました。

 

 

 

 

地面にかがみこんで観察していると体が冷え、手がかじかんできます。林床だけでなく樹幹上にもコケや地衣類が付いています。花の観察と違って同定作業に時間がかかります。今日は皆さんコケに夢中で、刈り残されたマルバダケブキの果実が今日は振り向いてもらえません。

 

  【オオカサゴケ】

 

いつもだと立ち寄る富士山展望地には寄らず、草原コースを下ります。遊歩道脇にあったはずのオオカサゴケの名札がありません。刈り払われて無くなってしまったかと思いましたが、ありました。塚田さんが新しく付けてくれていました。

すでに12時を過ぎてしまっています。雲がかかると風も強く寒いです。ロッジ入口で風をよけながら昼食をとりました。

 

  【フロウソウ】

 

 

 

  【クリンソウ】

 

昼食をとり終えた後は車で下の草原脇の駐車場まで移動し、湿地帯のコケ観察もしてみました。水辺にあったのはフロウソウでしょうか。何々ゴケとは呼ばれないコケの1種です。他にも岩に張り付いたコケたちがありました。クリンソウも果実から黒いタネをこぼれ出していましたが、観察対象からは外れて関心を持たれず、いつもは主役のヤチボウズも今日は寂しげでした。

 

焼山峠まで下っていくと、まだ少し時間があるので琴川ダム展望台の方へと回ってみようということになりました。展望台からは金峰山が良く見えていました。いつもとは反対側から見下ろす琴川ダムも新鮮でした。

 

  【イケマ】

 

  【ツルウメモドキ】

 

焼山峠へと戻る途中で、このあたりにクロウメモドキの黒い実があったはずという場所で車を降りて探してみました。数個の実が枝に残っていました。また近くにはイケマの果実がたくさん付いていて、裂けて飛び出たタネの羽が日の光を浴びて輝いていました。ツルウメモドキの実も残っていました。オニツルウメモドキかもしれません。ツルウメモドキの葉は両面とも毛が無く、オニツルウメモドキの葉裏の葉脈上には毛があるということですが、残念ながらすでに葉は落ちてしまっていてわかりません。来年の課題にしておきましょう。

 

  【カンボク】

 

焼山峠の近くまで戻ったところで同乗者から「あの赤い実は何?」と声がかかり、カンボクの実ではないだろうか、そうであれば見てみたいと車をとめて降りてみました。ルビーのようなカンボクの赤い実がまとまって日に輝いていてきれいでした。

花のない時期でしたが、塚田さんが付けてくれた名札のお陰でコケ観察をして乙女高原を楽しむことができたことに感謝です。来年度のイベントの一つとしてコケ観察会を加えてもらってもいいのではないでしょうか。

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