飲酒運転が原因による死亡ひき逃げ事件の被害者遺族が,運転手(懲役7年の有罪判決確定で服役中),一緒に飲んでいた同僚,車の所有者である勤務先の会社及び運転手の妻を相手にした総額8150万円の損害賠償裁判をおこし,東京地裁は,運転手の妻を除く3名に対し,総額5800万円の損害賠償を命じる判決を下しました。
飲酒ひき逃げ、同僚にも責任
一緒に飲んだだけで5800万円払うんですよ
飲酒運転に対する刑事制裁はかなり厳しくなってきました。それは飲酒運転における事故が多発していたためであり,当然の帰結だといえます。
一方で,死亡事故の場合,これまでは運転手自身に対する損害賠償請求のみであり,その他の場合は,せいぜい車の所有者(運行供用者)や同乗者(無理矢理乗せてといった場合程度)に限定されていました。
今回の判決は,「飲んだ後に車で帰ると分かっていながら一緒に飲んでいて,運転を制止しなかった」者に対し,「その後飲酒運転で大変なことになると予見できたのにあえて止めなかったのはけしからん。しかも運転手をおいたまま先に帰ってしまったのは飲酒運転を制止する義務を怠ったのでこれまたけしからん。」という理論構成により,一緒に飲んでいた人に対する民事上の損害賠償請求権を認めたものです。
この理論からすれば,飲み会を主催するときは,幹事はまず車で来ないことを明言し,それでも車できた場合には車をおいて帰るとこと強く促し,のみならずこの運転手が車を運転する以外の方法で帰宅することを見届ける義務が幹事及びこの運転手に酒をついだ出席者に課せられているということになります。
損害賠償はできる限り多くの人に認めるのが,被害者救済のためになります。今回の理論は,飲酒運転を予見できた上で,さらにそれを制止できる地位にありながらそれを放置した場合にも賠償責任が発生するわけですから,例えば会社の宴会の帰りに事故が発生した場合,仮に車の所有者がその会社のものではなく個人所有であったとしても,会社自体が損害賠償責任を負う可能性があることになります。
一方,今回,運転手の妻に対する請求は棄却されました。請求の理由は,「運転手が日常的に飲酒運転をしていることを知っていながらなんら方策を講じてこなかった」という点によるものでしたが,裁判所は「この死亡事故自体を防止する方法を妻は持っていなかった」として請求棄却にしたものです。
しかし,ここで注意する点は,妻や家族は無条件に損害賠償が認められない,という意味ではないことです。この判決を裏からいえば,「もしこの妻が飲酒運転を阻止する方策があったのにそれを怠った場合は,妻にも責任は出てきますよ。」ということになります。
例えば,飲酒した夫から「迎えに来て」と電話が来たのに「自分で運転して帰ってこい」なといったら,飲酒運転阻止義務違反として損害賠償の対象となります。また,「めんどうだからいやだ,勝手に帰ってこい」などと答えて場合も,この判決理論からすると,損害賠償責任が発生する可能性が高くなります(特に日常的に飲酒運転を行っている人の場合は,きっとこのケースでも損害賠償責任が発生する可能性が高いでしょう)。
このような責任を回避するためには,妻や家族や,今後このような理不尽な夫のために送迎することが余儀なくされるでしょうから,やはり飲み会があるというときは車を使わせないか,またはタクシーで帰ることを日頃から強く言っておく必要があるでしょう。
もちろん,この裁判,控訴される可能性が高いでしょうから,最後にはどのような判決になるのかまだ分かりません。
ただ,少なくとも確実にいえることは,「飲酒運転は死を伴う危険な行為。みんなでそれを阻止する道義的な責任はある。」ということです。
「飲んだら乗るな,乗るなら飲むな」はベタな交通標語ですが,これからは「飲んだら乗るな,飲んだら乗らすな」
が新たな交通標語になるのかもしれませんね。
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TB先一覧
http://news.livedoor.com/webapp/journal/cid__2254184/detail
飲酒ひき逃げ、同僚にも責任
一緒に飲んだだけで5800万円払うんですよ
飲酒運転に対する刑事制裁はかなり厳しくなってきました。それは飲酒運転における事故が多発していたためであり,当然の帰結だといえます。
一方で,死亡事故の場合,これまでは運転手自身に対する損害賠償請求のみであり,その他の場合は,せいぜい車の所有者(運行供用者)や同乗者(無理矢理乗せてといった場合程度)に限定されていました。
今回の判決は,「飲んだ後に車で帰ると分かっていながら一緒に飲んでいて,運転を制止しなかった」者に対し,「その後飲酒運転で大変なことになると予見できたのにあえて止めなかったのはけしからん。しかも運転手をおいたまま先に帰ってしまったのは飲酒運転を制止する義務を怠ったのでこれまたけしからん。」という理論構成により,一緒に飲んでいた人に対する民事上の損害賠償請求権を認めたものです。
この理論からすれば,飲み会を主催するときは,幹事はまず車で来ないことを明言し,それでも車できた場合には車をおいて帰るとこと強く促し,のみならずこの運転手が車を運転する以外の方法で帰宅することを見届ける義務が幹事及びこの運転手に酒をついだ出席者に課せられているということになります。
損害賠償はできる限り多くの人に認めるのが,被害者救済のためになります。今回の理論は,飲酒運転を予見できた上で,さらにそれを制止できる地位にありながらそれを放置した場合にも賠償責任が発生するわけですから,例えば会社の宴会の帰りに事故が発生した場合,仮に車の所有者がその会社のものではなく個人所有であったとしても,会社自体が損害賠償責任を負う可能性があることになります。
一方,今回,運転手の妻に対する請求は棄却されました。請求の理由は,「運転手が日常的に飲酒運転をしていることを知っていながらなんら方策を講じてこなかった」という点によるものでしたが,裁判所は「この死亡事故自体を防止する方法を妻は持っていなかった」として請求棄却にしたものです。
しかし,ここで注意する点は,妻や家族は無条件に損害賠償が認められない,という意味ではないことです。この判決を裏からいえば,「もしこの妻が飲酒運転を阻止する方策があったのにそれを怠った場合は,妻にも責任は出てきますよ。」ということになります。
例えば,飲酒した夫から「迎えに来て」と電話が来たのに「自分で運転して帰ってこい」なといったら,飲酒運転阻止義務違反として損害賠償の対象となります。また,「めんどうだからいやだ,勝手に帰ってこい」などと答えて場合も,この判決理論からすると,損害賠償責任が発生する可能性が高くなります(特に日常的に飲酒運転を行っている人の場合は,きっとこのケースでも損害賠償責任が発生する可能性が高いでしょう)。
このような責任を回避するためには,妻や家族や,今後このような理不尽な夫のために送迎することが余儀なくされるでしょうから,やはり飲み会があるというときは車を使わせないか,またはタクシーで帰ることを日頃から強く言っておく必要があるでしょう。
もちろん,この裁判,控訴される可能性が高いでしょうから,最後にはどのような判決になるのかまだ分かりません。
ただ,少なくとも確実にいえることは,「飲酒運転は死を伴う危険な行為。みんなでそれを阻止する道義的な責任はある。」ということです。
「飲んだら乗るな,乗るなら飲むな」はベタな交通標語ですが,これからは「飲んだら乗るな,飲んだら乗らすな」
が新たな交通標語になるのかもしれませんね。
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田舎ではなかなか飲酒運転がなくなりませんね。
以前聞いた話では,とある地方都市の警察署長が交代し,飲酒運転の取り締まりを強化したところ,飲食店の売り上げが一気に落ちたことから飲食店組合が警察に抗議し,さらにその抗議運動に地元の役場も荷担したことから,警察は取りまりを緩くしたということがあったらしいです(どこまで真実かは定かではありませんが。)。
また,飲酒検問の時「じゃあ,どう帰れっていうんだよ」と逆ギレされる場合も多いらしいです。
いずれにしても,飲酒運転は公職選挙法同様,まず私たちの方が意識を変えていく必要があるのでは,と思います。
数年前、第二の就職で田舎に数年過ごすことになったときのこと。久しぶりの中学時代の友人に誘われて飲みに行くことに。約束の時間に車で迎えにきてくれた彼、田舎ゆえ車での迎えは当然。だが旧交を温めて飲み終えた後、そのまま車で送ってくれるという。お互いかなり飲んだから代行運転を薦めたが、彼はいつものことのように大丈夫といって取り合わない。断りきれず約10kmの道のりを恐怖心を抱きながら同乗。それ以来、彼の誘いは遠慮することにしました。彼が特殊かどうかは知りませんが、田舎でも代行会社はあるのに飲酒運転は中々なくならないようです。
何も考えずに飲むには,自宅がベストでしょうね。あとは,近所で飲むとか。
とはいえ,どうしても仕事帰りに飲みたくなるものです。その場合は,やはり「車で来ない」か「代行で帰る」に限るでしょう。
ちなみに,私も下戸なので,仮に飲酒運転が合法であったとしても,とても恐くて運転不能だと思います。
飲酒運転に厳罰化の一方で,日本ではまだまだ「飲酒運転に対する考え方の甘さ」がありますね。冠婚葬祭や季節イベントの歳には,車で来ている人にも平気で酒を勧め,逆に断ると「今日はイベントだから平気だよ」となんら根拠のない理由で飲ませたり,あるいは飲んだりしています。
まず,こういう風習や考え方を完全に排除するべきでしょう(冠婚葬祭の帰りに飲酒運転で事故を起こすという事例は実際かなりありますし,通常の飲酒運転と危険性は全く変わりません。)。
あとは,地方では公共交通機関がないために車でのみにいくという場合がかなりあるようです。こういう場合は,代行制度をもっと充実させるべきでしょう。むしろ,代行がない地域の場合,民間業者の新規参入がしやすいのでは,と思います。
飲酒運転については,刑事上も民事上も厳しく責任が問われるようにした方が良いですね。また,民事責任については,ある程度は合理的な推定によって,広く因果関係を認めて損害賠償の可能性を広げることも大事だと思います。
また,ご指摘の運転の予見可能性については,あくまでも民事上の責任であることから,裁判所はかなり緩やかに解釈すると思います。
したがって,「飲み屋に車で来た」→「帰りにタクシーや代行車を呼ぼうとしていなかった」→「幹事や同席者も特に手当を講じていなかった」という事実が認定されれば,賠償責任を認めてくるのではないかと思います。
これから夏祭りや花火観覧・盆の時期と、酒の機会が増える感じですね。
私は大量に飲みたい!という方は、自宅しかないと思いますね。下戸の私が言うのもおかしいですが、何も飲み会だけにしか酒が無いのでは無いですし。
たまには誰かのお宅で・・・というのもいいですよ。私の時は、自分の飲み分を近くのコンビニで買い、(私の)家に持ち込んでもらってダベった覚えがあります。
また、妹が実家にいたとき叔父がきて、車で来てるにも関わらず、叔母に「お酒出して」って言われてムッときたことあるようです。こんな妻がおるから困ったもんやなと呆れてます。
我が家は主人が飲んで帰っても迎えに行ける状況ではないので、電車+歩きかタクシーで帰ってきています。先日電車を乗り越ししてしまって約6km歩いて帰ってきたらしいけど、私は寝てしまって連絡に気付きませんでしたm( )m
事故を自分が起こす可能性もあればもらい事故って可能性もあるし、いずれにしても飲む飲まないで人生が変わるって認識が必要かと思います。
未必の故意による殺人と見なしても良い
と思います。
危険運転罪なんて新設されましたが、まだ
まだ軽いですね。他人の生命を奪っておき
懲役10年程度じゃ。
ただし、この周囲の責任に付いては、周囲が
「運転する事実を予見できたか?」でかなり
難しい裁判になりそう。立証するのがとても
難しそうですから。
ともあれ、事故を起こした加害者は厳罰にする
のが一罰百戒だと思いますが・・・