あれは,あれで良いのかなPART2

世の中の様々なニュースをばっさり斬ってみます。
ブログ界の「おか上彰」を目指し、サボりながらも頑張ります!

あなたは髪を信じますか?

2005年11月18日 00時50分56秒 | 裁判・犯罪
美容院で自分の希望以上に髪を切られたとして600万円の慰謝料を請求していた事件の判決が東京地裁であり,判決では既払い金を控除して24万円の損害賠償が認められたそうです。

美容師もプロですからねえ

判決を分析しますと,①女性にとって髪は重要な要素,②特に本件原告はキャバクラ嬢であり,自分の髪を売りとしていたこと,③カットについては美容師が任せてと言って切り始めたので,美容師のミスという要素が強い,④とはいえ,ある程度はツケ毛でカバーできるはず,⑤だから基本的な損害は本来なら買う必要がなかったツケ毛代,ということになります。
この判決,全文を読んでいないのではっきりとしたことはいえませんが,根底にある思想は,請負に対する瑕疵担保責任にあるのではないでしょうか。
専門用語になりましたが,簡単に言えば,仕事を頼まれた人は,ちゃんと仕事をする(つまり「いい仕事してますねえ」といわれるようにする)責任があり,中途半端な仕事で終わりにしたら,責任取ってもらいますよ,というのが,瑕疵担保責任です。
今回の場合,美容師側が自分に任せろと言って切り始めた結果,原告の希望とかなり離れた結果が発生した以上,「いい仕事」をしなかったといえるため,幾ばくかの責任が美容師側にあるよ,という判決であろうと推測できるわけです。

したがって,今回の判決は,今後すべての美容師理容師がカットミスの責任を無条件に負うというものではなく,客側がちゃんとオーダーをした場合において,そのオーダーから大きくずれる結果が発生した場合にのみ責任が発生するといえるでしょう。ただし,精神的な損害賠償はほとんど認められないため,仕事等でどうしてもツケ毛やかつらが必要となった場合に限り,その分の賠償責任が発生する,ということになるでしょう。
よって,例えば映画「バーバー吉野」のもたいまさこさんが演じる理髪店のような場合,訴えたところで原告側に勝ち目はありません(よかったね,もたいさん)。

だからといって,美容師理容師の皆様,安心しないで引き続き一生懸命仕事やってくださいね。

ところで,例によって,この判決に対して様々な賛否や憶測が飛び交っており,一部では原告に対するあらぬ誹謗中傷もネット上で横行していますが,まず根拠のない誹謗中傷は止めましょう。裁判を受ける権利は誰にでもありますから。
更にいうと,この事件,この原告の手元に残るお金は「ほぼ0円」です。弁護士費用(着手金)を考えると,本件では通常30~60万円程度であるため,むしろ赤字になっていることでしょう。
そう考えた場合,今回の判決の金額は,実は絶妙なところで落ち着いているともいえますね。

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