あれは,あれで良いのかなPART2

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参院選2016戦況分析してみました

2016年07月10日 20時00分00秒 | 政治・選挙
参院選,与党圧勝の形で終わる見込みとなりました。自民党は27年ぶりに単独過半数を取得するなど,衆参安定状況となりました。また,いわゆる改憲勢力と言われる政党が3分の2を超えるなど,形式的には憲法改正発議が可能な状況となりました。

実はあまり目玉のない参院選

今回,18歳以上の選挙権が認められるという点がかなり話題となりましたが,投票率を大きく跳ね上げるほどの効果はありませんでした。とはいえ,18歳も政治家に物申せるという時代になりましたので,今回の選挙結果を今後分析した上で,各政党とも,多少なりとも若者への対策に力を入れてくれるだろうという淡い期待があります。そういう意味では,今回投票した18歳19歳の方,全く無駄にはなっていませんよ!そこは安心してください。

ところで本題の選挙結果ですが,大きく見ると,3年前の民主党惨敗があまりにひどすぎたため,それを基準にすれば,今回の選挙結果それ自体は,実に平均的というか穏当なところで着地したといえます。ただ,3分の2の議席を改憲勢力が占めたのは,どちらかというと3年前の惨敗の影響が大きいといえるでしょう。したがって,3年後,特に大きなスキャンダルが与野党ともになかったとしたら,3分の2の議席や,自民党単独過半数は,一気に可能性が低くなるといえるでしょう。言い方を変えると,参院選とは,1回の選挙が次回の選挙までしか影響がないのではないく,次々回の選挙にまで影響を与える実に重要な選挙であるといえます。
そのうえで,今回の選挙を分析しますと,実は圧勝だった自民党と公明党,内容については圧勝する要素がありませんでした。小泉政権のような劇場型選挙というわけでもなく,大きな争点について是非を問うようなものでもなく,何よりも有権者が決して自民党を高く評価しているわけではないという点などがその理由です。
でも,なぜ圧勝なのか?これは,自公の戦術が良かったというよりも,野党の戦略がお粗末だったという点が非常に大きいといえます。
そこで,今回の選挙結果を,野党側を中心に主に敗因分析等形で検証してみたいと思います。

1 野党共闘の目論見の甘さ
  これはすでに何度か指摘していることですが,野党共闘は前提として「有権者は与党か野党か」の二択の選挙になるということを想定して考えられたものです。
  確かにそうなんですが,ここに盲点が。有権者は,「自民党はに入らないが,でも野党もだらしがない」という判断をした場合,残念ながら「棄権」という選択肢を選んでしまうことが多いのです。このことは,投票率からみても明らかです。
  つまり,有権者は,与党,野党,棄権の三択であるということになります。そして,野党がもくろんでいた反自民票というのは,その多くは実は棄権に流れているのです。棄権票が多い,すなわち選挙に行く人が少なくなればなるほど,組織力のある自公は強いですから,必然的に圧勝します。もっというと,政治不信になればなるほど,「どうせ政治家なんてどこの党もいっしょだ」などと思われて,選挙から離れてしまいます。
  野党共闘の戦術として,「棄権票を減らす」,すなわち「浮動票を投票所に連れてくる」という努力をすることの方が大事だったのです。

2 野党の理念が見えない

  野党共闘が不発だった事情として,もう一つ言えることは,「ビジョンが見えなかった」ということです。
  「安倍政権の暴走を止める」などをコピーにして戦ってきましたが,残念ながら「じゃあ,具体的に野党は国民に何をしてくれるのか?」というビジョンが全く見えませんでした。
  もちろん,「いやあ,それはマニフェストに書きましたよー」と反論するでしょうが,でもそんなのはただのアリバイにすぎません。
  ちなみに,自民党は,内容の是非は別にしても,「前進か,後退か」として,アベノミクスを継続して景気を良くさせるというビジョンを示していました。また,厳密には野党ですが,おおさか維新も,「まずは身を切る改革をすること」など,ある程度イメージがわくキャッチコピーを展開していました。しかし,民進党や共産党等は,残念ながらこうした政策をイメージできるキャッチコピーはほとんど出していませんでした。
  やはり,有権者も馬鹿じゃありませんから,理念が見えない政党や候補者に一票を投じようとは思わないでしょう。結果,こうした票は棄権や自公などに流れたといえます。

3 安倍政権の暴走って何?
  2の続きですが,もっと端的に言うと,実は,有権者の多くは,そもそも安倍政権が暴走しているとあまり実感していません。理由の詳細は4以下で述べますが,ざっくりいうと,「自分の生活に密着する事項については,さほど変化がない」からです。
  野党は,憲法改正や安保法案関係などから,暴走という表現を使っていましたが,正直まだそのことに実感がわいていない以上,暴走を止めるといわれても全くイメージがわかないのです。
  野党としては,暴走の具体的なイメージ,すなわち憲法改正や安保法案などの今後の影響を,端的に,かつ分かりやすく有権者に説明するという作業を行うべきでした。もちろん,やってたよ,という反論はありますが,残念ながら自公側の「安心してください」の説明の方がやり方も含めて上手でした。

4 実は安保や憲法改正は,さほど興味関心のない分野
  仮に安倍政権が暴走しているとして,安保法案や憲法改正というテーマに対し,有権者がどの程度理解し,関心を抱いているかというと,実は,あまり高くありません。投票の際に重きを置いた人は1割程度しかいないという調査結果が出ています。
  むしろ,前述のとおり,有権者が重きを置いたのは,自分のこととしてイメージのわきやすい身近なテーマです。具体的には,景気対策,年金問題などの社会保障です。
  したがって,安保や憲法改正をあまり意識していない以上,それに対して暴走だなどといっても,全くぴんと来ないのです。

5 経済政策,景気対策の対案が見えない

  アベノミクスの是非については,確かに野党もいろいろ指摘し,議論をしてきました。
  しかし,残念ながら野党は「これは失敗だ」ということだけを連呼しただけで,その対案をほとんど示してきませんでした
  当然ながら,有権者としては「アベノミクスがだめだとしたら,じゃあ野党だったらどんな景気対策,経済政策を示すんだ?」という疑問を抱くだけで終わってしまいました。
  ここも,野党側からは「対案は示した」などという反論があると思いますが,残念ながら具体的な内容はほとんどの有権者が理解していない,または全く聞いていないと思います。これは,明らかにプレゼンが下手すぎです。

6 消費税増税凍結に対する対応が理解できない

  安倍総理が消費税増税を凍結させました。
  多くの国民は,過程は別にしても,その結果については一応評価しています。
  ところが,野党は,消費税増税凍結について,公約違反として反論しました。この部分だけを切り取って見ると,あたかも「消費税増税をするべきだったのか?」と思われてしまう可能性があります。
  特に,民進党は,正直軸足が全く分かりません。増税したいのか,凍結が良かったのか,何を言いたいのかがよくわかりませんでした。真意としては,「アベノミクスが失敗だったので,景気が悪かった。だから,消費税増税を凍結することになった。この景気悪い原因は安倍総理の政策にあるから,ここを改めさせるべきである。」という意味合いで批判を繰り広げてきたのでしょうが,多くの有権者は,この土俵の違う批判の真意をほとんど理解していないと思います。これも,プレゼン下手という点につきます。

7 若者が選挙に行く際に参考にするのはネット情報

  公式サイト以外に様々な情報が流れていますが,与野党どちらの情報が多かったでしょうか?私はビッグデータ分析機能を持っていないので確実なことは言えませんが,感覚的には与党関連の情報の方が多かったと思います。やはり,ここはサポーターの力が大きいでしょう。
  ネット社会は侮ってはいけません。

以上,ざっくりいうとこれが野党共闘の敗因といえます。
とにかく,一言でいうと,「野党は,有権者にもっと具体的で分かりやすい説明を繰り返すことをしない限り,与党に勝てない。」ということです。そのうえで,「永田町の論理が正しいと思っている限り,政治不信は解消されないし,投票率は増えない」ということが言えるでしょう。
野党は,本気で与党と対峙しようと思っているのであれば,今回の選挙を踏まえてこうした点も含め,きっちり分析し,今まで以上に国民側に立った政治活動を繰り広げるべきなのです。
一方,自公の与党側も安心できません。今回の選挙では,積極的に自民党を支持している人が増えているわけではありません。むしろ,野党が勝手にこけてくれたので勝っただけです。であるとすると,ここで胡坐をかいていたら,かつての政権選択選挙のようなことが再来しないとも限りません。かつて自民党の強みは「あなたの隣に自民党」と言われるくらい,実は地域密着の政治活動を繰り広げていましたが,90年代以降は,そうした地道な動きが減少し,有権者からの距離が離れつつあります。ここを見直し,地域密着型の政治活動をきちんと行うことで,基礎をきっちり作り上げる必要があるでしょう。
今回の選挙は,砂上の楼閣です。単独過半数だからとか,3分の2あるからといって,横暴な対応をしたら,本当に次の選挙ではあっという間に逆転されるでしょう。1人区選挙区では,結構多くのところで接戦にまで追い上げられていましたから,油断はなりません。

そうです,本当に簡単に言うと,「真面目に政治活動をした政党や候補者が次は勝つ」のです。そのことは,与野党ともに肝に銘じて,国民のために働いてもらいたいものです。
以上,参議院選挙短評でした。

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