あれは,あれで良いのかなPART2

世の中の様々なニュースをばっさり斬ってみます。
ブログ界の「おか上彰」を目指し、サボりながらも頑張ります!

グリーンピースの行為は捜査妨害だった

2008年05月17日 20時26分22秒 | 法律問題
環境団体の「グリーンピース」が,調査捕鯨船乗員が鯨肉の一部を横領したとして東京地検に告発しましたが,その際の調査方法として,西濃運輸が保管していた荷物の一部を勝手に開けて調べたということで,今度は逆に西濃運輸が窃盗で被害届を提出しました。

宅配荷物紛失で被害届=環境団体持ち出しの鯨肉か-西濃運輸(時事通信) - goo ニュース

これが許されたら警察は令状いらない

西濃運輸が窃盗罪の被害届を出したのは,お客様から預かった荷物がなくなった以上当然の話なので,ここでは特に問題にはしません。
問題なのは,「グリーンピース」の告発です。世間では,この団体の胡散臭さが取りざたされていますが,胡散臭さを前提にすると争点がぼけるため,ここではあえて「ある人が勝手に人の荷物を開けた結果,横領の証拠が見つかった場合にどうなるか」という点に絞って説明したいと思います。
結論から言えば,これは「証拠として使えない」ということになります。人のものを勝手に開ける根拠がないからです。もし,これが許されるのであれば,警察は令状を裁判所からもらう必要がなくなります。イメージとしては,今あなたの家に警察が令状なしで「おい,ちょっとお前の部屋の中見せてもらうぞ」と乗り込んで室内を物色できるということになります。
それはどう見てもおかしいですよね。だから,憲法上の要請で他人の物を調べるためには令状が必要になっています。
警察でさえそうなのだから,一般人についてはなおさらのこと,「他人の物を無断で調べる」根拠はないのです。むしろ,他人が持っているものを勝手に調べるというのは,他人が管理保管しているものを取り出そうということにもなりますので,占有を侵害したとして「窃盗罪」になり得ます。

このように違法な行為で証拠を集めることを「違法収集証拠」といいます。そして,日本の刑事訴訟法では,このような違法収集証拠は裁判の証拠として採用されません。のみならず,違法捜査を抑制するという意味で,この違法収集証拠から派生した証拠についても「毒樹の果実」として証拠として採用されないのです。
今回のグリーンピースの行為は,担当弁護士が合法と言っていますが,西濃運輸との間に「荷物見て良いよ」という契約がない以上(そんな契約は普通はないが),違法行為となります。とすると,仮に警察が捜査をしたとしても,その段ボールやそこから派生する証拠は捜査資料に使えないと言うことになってしまうのです。あとは横領の事実として,伝票などを令状で押さえるしかありませんが,「じゃあ,なんで伝票を押さえる必要が出てきたの?」と裁判所は必ず疑問提示しますので,そこで「いやあ,実は一般人が勝手に開けた段ボールから横領のものが出てきたので,横領事実が分かったのですが,これ違法収集証拠なので使えなくなったから,別の証拠集めようと思って」と答えたら,令状は却下されます。これ認めたら,「とりあえず違法でもいいから勝手に見ちゃえ」が横行するからです。どうしても令状請求するならば,この段ボールとは全く関係のないアプローチで攻めるしかなくなります。しかも,攻めるきっかけも必要となるのです。
とすると,グリーンピースが行った行為は,「捜査協力」ではなく,「証拠隠滅行為という捜査妨害」にすぎないのです。
小さな親切のつもりかもしれませんが,捜査機関からすれば「大きなお世話どころかすべて台無しにしやがった」と思われても仕方ありません。

このように,世の中には,よかれと思ってもやって良いことと悪いことがあります。社会正義と思っても,それが実は社会悪になることがある,ということをこのグリーンピース問題から学んでください。これは,やった人が「グリーンピース」であろうと,報道目的のマスコミであろうと,信頼性の高いNPO団体であろうと同じことです。また,相手が暴力団であろうと,隣の家であろうと同じことです。
「**だから許される」という法理はありません。

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やっぱり素直には進まないロス疑惑問題

2008年03月02日 23時23分35秒 | 法律問題
ガソリン国会で来年度予算案が半ば強行的に採決されて衆議院を通過したことすら話題にならないほど盛り上がっている「ロス疑惑」問題ですが,三浦氏担当弁護人が,改めて保釈を求め,かつサンフランシスコ移送を拒否する方向で全面対決をするようです。
一方で,ロス市警元捜査官のジミー佐古田氏も「有罪の証拠はある」とこれまた受けて立つ姿勢を示しました。

三浦元社長弁護人「たかがロス市警」 元捜査官の自信に(朝日新聞) - goo ニュース

共謀罪が穴だった

まず,案の定,「一事不再理問題」が出てきました。この点は,私も従前から指摘していたところですが,ちょっと当初の考え方と違ったのは,「カリフォルニア州では,外国裁判についての一事不再理効を適用しない法令」が,日本の最高裁判決確定後にできたという点でした。つまり,この一事不再理問題には,「刑罰不遡及の原則」まで絡んできて,もっと面倒なことになってしまったのです。
この点,分かりやすく説明すると,「後からできた法律は,過去の行為を処罰できない」ということなのです。これを認めると,誰も安心して生活できませんから。
例えば,今日「街中でくしゃみをしたら死刑」という法律が仮にできたとした場合,突然警察がやってきて「お前,1週間前にくしゃみしたから逮捕」といわれたらどう思いますか?きっと「聞いてないよー」と反論するでしょう。これが「刑罰不遡及の原則」なのです。つまり,「聞いてないよー」,だからそれが罪になるとは思わずに行為して当然だろう,っていうことなのです。

で,ロス疑惑事件に当てはめると,日本の最高裁の判決が出た時点では,カリフォルニアでは,外国判決に対して一事不再理を認めていました。とすると,三浦氏からすると,「やれやれ,これでカリフォルニアでも処罰されない」と思うわけですが,それがその後法律変わって「やっぱり適用できるよ」とすると,「そりゃ,聞いてないよー」になるわけです。
もちろん,ここはいろんな考え方ができますので,今後の裁判では,当然ここが大きな争点となります。

ただ,一方で,一事不再理とは別次元の話も出てきました。それが「共謀罪」です。すなわち,日本では「共謀罪」が存在しない以上,この罪で三浦氏を処罰することは絶対にできませんし,日本の裁判ではこれは審理対象外となっていました。
ところが,アメリカには共謀罪があります。そして,アメリカ刑法が属地主義,すなわちアメリカで起こった事件はアメリカで処罰できるという原則を踏まえると,少なくとも共謀罪については,「アメリカで裁判をしても一事不再理には関係がない」ということになるのです。
すると,カリフォルニアの検察官の落としどころとしては,「殺人罪は仕方ないが,共謀罪だけでも十分懲役に持っていける」という裁判方針ではないでしょうか。
ただし,ここにも一事不再理の問題が出ないわけではありません。すなわち,一事不再理の趣旨は「ひとつの事実で複数処罰されない」という原則ですから,ここで共謀罪で処罰することは,まさに「ひとつの事実を違う面から評価している」ということになるのです。
よって,ここも裁判では大きくもめることになるでしょう。
したがって,この裁判,事実認定にいたるまでにかなりの時間をかけて法律論争が続くと思います。もちろん,アメリカの法律が前提なので,これについて日本がとやかく言う筋合いではありませんが。
ただ,グローバル化した現代社会においては,国境をまたぐ事件はたくさん出てきます。したがって,そろそろ「一定の国際的ルール」が必要かもしれません。

ちなみに,これは非常にかんぐった発想で根拠はありませんが,今回,アメリカの逮捕を日本政府が放置している背景としては,「日本でも共謀罪が必要だ」ということを国民に見せ付けるためではないかともいえます。
すなわち,アメリカで彼が有罪になれば,「ほーら,共謀罪っていう罪があれば,こうやって処罰できるようになるでしょう。便利でしょう。」とアピールできます。また,彼が処罰されることで溜飲が降りる人たちも多いでしょうから,おそらく「なんだ,日本に共謀罪があれば,日本の裁判でも有罪になったのに」と考えてしまい,「やっぱり共謀罪必要だ」という論調が増えてきて,結果共謀罪成立が容易になる,っていうことになります。
まあ,根拠0の話なので,これはかんぐりすぎだとは思いますが・・。

いずれにしても,この問題,単なる「真実は何か」という点よりも,かなりディープな法律論争になります。刑法学者や国際公法学者などが,今後どのように評価するか,その点が注目です。

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疑惑の銃弾リターンズ?

2008年02月24日 01時01分12秒 | 法律問題
1981年にアメリカ・ロサンゼルスで発生した三浦一美さん射殺事件(いわゆるロス疑惑事件)で,アメリカ警察当局は,サイパンに来た元夫の三浦和義氏を逮捕したと発表しました。
今後,ロサンゼルスに身柄を移された上で,起訴される見込みとのことです。

「ロス疑惑」の三浦和義容疑者、27年を経て米で逮捕(読売新聞) - goo ニュース

一事不再理では?

この事件,10年以上にわたり世間をにぎわせましたが,日本の最高裁で無罪が確定しました。事の真偽はともかく,法律上はロス疑惑は三浦和義氏の犯行ではないという結論に達したのです。
仮に「ロス疑惑の犯人の証拠が出てきた」としても,日本の憲法,法律ではもはや三浦氏を再度逮捕,起訴することは絶対にできません。これを「一事不再理」と呼びます(憲法39条)。
一方,アメリカの憲法では,「二重の危険」にさらされないように規定されています。基本的には一事不再理と同じです。
とすると,今回アメリカが三浦氏を逮捕できる根拠が非常に怪しいということになります。
考え方として,おそらく「彼はまだアメリカでは逮捕,起訴されていないので,アメリカの一事不再理に該当しない。すなわちアメリカ国内では二重の危険にさらされていない。」というところでは,と思います。
確かに,日本の法律でも,日本人が海外で犯罪を犯し,その国で逮捕,起訴されて処罰を受けた場合,日本帰国後改めて逮捕,起訴することはできます。ただし,「二重の危険」の趣旨にかんがみ,海外での刑事処罰の内容は考慮され,減刑または罪の免除となります(刑法5条)。しかし,海外で無罪が確定した場合でも日本帰国後改めて逮捕,起訴することはできないと解釈されています。一度無罪の利益を得たことから「二重の危険」にさらされるからです。
とすると,アメリカでも同じことが言えるのではないでしょうか。すなわち,一度日本で無罪となっている以上,改めてアメリカで起訴することは,「二重の危険」となり,完全に一事不再理効に反するといえます。
今回の件は,まだ情報が不完全なのでなんともいえませんが,仮にロス疑惑に関する容疑での逮捕,起訴となる場合,日本国政府としては,自国民の人権侵害がはなはだしいとしてアメリカ政府に対し,身柄引き渡しの要求をするべきではないでしょうか。
これは,真実がなんだったかとか,彼のひととなりがどうなのかなどに関係ありません。とにかく,「裁判で一度決着がついた」以上,海外で同じ事件で身柄拘束を受けることは重大な人権侵害に該当します。とすれば,やはり政府としてしかるべき対応が必要と考えます。
今後の日米両国の対応に注目です。

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銃の許可はかなり厳しいが・・

2007年12月16日 02時43分01秒 | 法律問題
長崎県佐世保市の散弾銃乱射事件は容疑者自殺という最悪のシナリオで幕を閉じました。
一方で,この容疑者が銃を所持していたことに対し,近隣住民から「許可するのはよろしくない」という意見が従前から警察に寄せられていたことが判明し,警察の銃所持許可の問題があったのではないかとの指摘がされています。

佐世保乱射 散弾銃許可めぐり論議も(産経新聞) - goo ニュース

警察の前に法律があるんだけど

例によって,テレビのコメンテーターは,鬼の首を取ったかのように「なんでこんな奴に銃を持たせたんだ」とか「そういう声があれば免許取り消せばいい」などと主張していました。
総論はそのとおりなのですが,そもそも銃の許可については,実は「許可は厳しいが,許可後は積極取消事例は少ない」というのが実情なのです。そして,それは別に警察がさぼっているからではなく,銃刀法の規定上,積極的に取り消す根拠が乏しいからなのです。
ちなみに,警察庁発行の白書では,平成17年の銃所持許可総数388,856うち,新規23,000,一方で許可取消119,紛失等による失効等34,953となっており,許可件数に対し,取消権数はごくわずかとなっています詳しくはこちら)。

そもそも,銃を所持する際には警察の許可が必要となりますが,この際の審査は世界有数の厳しさだそうです。許可できない欠格事項が結構定められているほか,親族に対する照会まで行い,そこで問題があると許可はしないという運用になっています。
そこで,そこで問題となるのが「近隣住民の意向は聞かないのか」という点です。現在の運用では,ごく例外を除いて近隣住民の意向までは聞きません。それは,個人のプライバシーの問題もありますが,法律上積極的に聞く根拠がないことや,近隣住民とのつきあいが希薄な現代社会では,まじめに銃で競技や狩猟を行おうとしても,隣近所とつきあいがなければ,おそらく「隣人が銃を持つことに賛成か」と聞かれれば「いいえ」と答えてしまい,許可にならないという事例が続出することが想定されるからです。
ちなみに,親族や近隣住民に意見を聞く根拠は,銃刀法5条にある欠格事由中「他人の生命若しくは財産又は公共の安全を害するおそれがあると認めるに足りる相当な理由がある者」の審査のためと言うことができますが,表現が抽象的なので,近隣住民に積極的に意見を聞く根拠としてはちょっと弱いのです。

まして,これで一度許可になりますと,原則3年ごとの許可更新となります。すなわち,事故が発生しない限り,警察は3年間現状を把握することができません。そして,そこでもしも5条欠格事由に該当すれば,許可は取消となります。
すなわち,近所の人が「あの人に銃を持たせたら危ないよ」という意見が寄せられたとしても,それが具体的に「公共の安全を害するおそれがあると認めるに足りる相当な理由」がない限り,警察は不許可,または許可取消ができないのです。
したがって,今回の長崎の件についても,佐世保警察を直ちに責めることはできないのです。
むしろ,現状の銃刀法が,所持後の取消規定が弱いという点の方に問題があるのです。したがって,まず議論すべきは,「警察の怠慢」ではなく「銃刀法の改正」にあるのです。具体的には,警察の調査権充実と更新期間短縮,さらには不許可事由のより明確化や,不許可にするか否か審査中の間の許可一時停止の規定などを設け,「銃を持つまではもちろん,持ってからも厳しいですよ」という点を充実させる必要があります。一方で,近隣住民もいろいろいますので,近所の人が言った=即不許可というあいまいなルールではなく,この点もより明確となるようなルールづくりも必要となります。そうなれば,警察も動きやすくなるでしょう。

もちろん,現状の規定でも,まじめに銃を扱っている人たちからすると,「かなり厳しい」という声を聞きます。確かにそうかもしれませんが,タバコの禁煙場所が増えてきたのと同様,銃を使うバカな犯罪が増えてきている以上,多少の制約はやむを得ないといえるでしょう。むしろ,銃仲間での結束を高め,「銃の犯罪は絶対に防ごう」という動きになればよいとは思いますが。

とにかく,銃に関する犯罪は確実に増えています。銃犯罪は重大事件に発展しやすいだけに,厳しい規制はやむを得ないでしょう。まじめな銃使用者には本当に酷かもしれませんが,馬鹿者がいなくなるまでは厳しい規制に協力してほしいものです。

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「まことちゃん御殿」はモラルの問題

2007年08月05日 12時00分40秒 | 法律問題
まことちゃん」などで知られる漫画家楳図かずおさんが現在建築中の自宅について,その外装が
あまりに奇抜すぎて周辺の景観を破壊するなどとして,近隣住民らが工事差し止めの仮処分をしました。

楳図さん自宅建築に待った=住民ら中止求め仮処分申請-東京地裁 (時事通信) - goo ニュース

これはモラルの問題だから大人の解決が理想的

今回の件は,簡単に言えば,楳図さんの自宅の外壁が「赤と白のストライプ」になることが,明らかに周辺とミスマッチだし,見ていて不快感すら覚えるということから工事差し止めを求めた,ということです。
ところが,基本的には,「自分の土地にどんな家を造ろうと自由」というのが,資本主義国家の大原則です。もちろん,都市計画法建築基準法などでは,「その土地には,どのような構造で,どのくらいの規模の建物まで作って良いか」という規制はしていますが,その基準さえクリアすれば,内外装や建物それ自体の外観についての規制はありません。とすると,基本的には「法による縛りがない以上,自由だー」(by 犬井ヒロシ風に)ということになります。
ただし,それでは確かに周辺環境にミスマッチな建物が建ってしまい,結果町並みがおかしくなるということも容易に想定されます。そこで,多くの自治体では,「景観条例」などを策定して,その町並みにふさわしい外観にしようという規制を行っています(もちろん,文化財保護法などの法律で外観規制している場合もあります。)。典型例として,近隣の国立市で,ケヤキ通りではケヤキの木より高い建物を造らないなどしているものがあげられます。
なお,近年景観法もできましたが,これは結局自治体で計画を作ることを定めているに過ぎず,この法律が直接の制約根拠にはなりません。

今回の場合,楳図さんが建築しているエリアには,まだ景観条例が策定されてなかっったようです。とすると,法的に規制する根拠が乏しいことになります。
もちろん,住民側は「景観保持義務や景観保持に対する権利は住民にある」という論拠で仮処分を行ったものと推測されますが,果たしてこのような権利義務が法的に認められるかどうかは,本格的に裁判をしなければ判断できないでしょうから,仮処分レベルでは「明確な権利義務ではない」といわれる可能性が高いと思われます。
また,外壁であれば,いつでも塗装で直せます。したがって,建物自体の構造が明らかにおかしいという場合でなければ,「いつでも修復可能だから,保全処分しなくても,その後の民事裁判の結果を見てからでも遅くはない」という判断をする可能性もあります。
そうなると,やはり仮処分は認めにくいのではないかと推測されます。

とはいえ,楳図さんも今後この家で生活するとなると,近隣住民とは近所づきあいをすることになります。とすれば,「隣近所は敵」という環境よりも「お互い仲良く」という方が,何かと都合がよいのではないでしょうか。これは,別に楳図さんに限らず,一般的にそういえるでしょう。
とすると,譲れるべきところは譲り,お互いに妥協できる範囲で自宅を建築するのがよいのではないでしょうか。
つまり,この問題は「モラル」の話なのです。

一方で,武蔵野市に景観条例がないことを批判する意見も出ています。もちろん,行政が完全に放置することは問題がありますが,景観条例とは,「地域の景観の保全」ということですから,まずは地域住民のコンセンサスを得る必要があります。ところが,住宅街の場合は,これがかなり難しい作業となります。特に色の制限は,住民の個性が多種多様ですから,みんなの意見をまとめながら制限することは難しいです。それに,景観条例も立派な「所有権に対する制約条例」ですから,一歩間違えると憲法29条の問題となり得るため,かなり慎重な議論が求められるのです。
したがって,景観条例がない=怠慢,という方程式は,必ずしも妥当ではないのです。もちろん,以上の問題をクリアしながらあえて放置していたというのであれば,怠慢と言われても仕方ないとは思いますが。

はたして,この問題,どのような形でけりが付くでしょうか。楳図さんも大物なのですから,大物なりの「大人の解決」を望みたいものです。

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年金払ったかな?って調べたら,国全体の詐欺がばれるかも

2007年07月11日 01時57分50秒 | 法律問題
年金のデータ漏れ等から真の受給権者か否かを判断する年金記録確認中央第三者委員会が一応の方針を示しました。これによると,一応確からしいと全体的に判断できれば支給するということのようです。

「一応確か」なら支給=証拠なくても-年金記録漏れで判断基準・総務省第三者委 (時事通信) - goo ニュース

払ったつもりで払ってないことがありそうだ

この問題,今さら細かいことはいいません。基本的には,立証責任を国に転換させてもよいと思います。
ただ,実は,この問題を調査していくと,非常に困る人たちが日本全国で出てくる可能性があります。それは,「昭和2,30年代に年金払込金をくすねた人たち」です。
実は,本人が払ったつもりだが,そのお金が社会保険庁に納められていない場合があるのです。
払ったつもりで払っていないという事例は次の点が想定されます。

1 会社が納めていなかった(会社が天引きした社会保険料を別の経費で使ってしまった)←いわばこの会社の詐欺行為
2 集金人が支払わずに自分で使った←当時は近所の人が集金をしていたことがあったため,その人がお金を払わずに使い込んだ。
3 年金分払い戻し(掛け金の還付)←昭和30年代までは,女性は仕事しても結婚退職をすることが多いことから,その頃のOLで結婚退職した場合は,名目はともかく,かけた年金が一時金として還付された,ということが慣例としてあったようです。当然,そうなると実質払い込みなし,ということになります。

今回の調査では,「一応確からしい」ということで年金の受給権を認めるとのことですが,実際支払われたかどうかを調べていく過程の中で,上記事項が判明する可能性があります。そうなると,人によっては,「昔の悪事が暴露」という可能性すらあるわけです。
年金問題=社会保険庁批判という方程式が完成してしまいましたが,実は原因の一端にはこのような「払ったふり」をした人たちの存在もあるという点を見逃してはいけません。もちろん,もはや刑事上民事上の責任は問われませんが,道義上の責任を感じる場合は,今すぐ「自首」した方がよいでしょう。
とにかく,単純に入力漏れだけではなく,こういった問題もあり得る,という点だけでもご理解いただければ幸いです。

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自家製梅酒,タダならご近所にお裾分けしても大丈夫

2007年06月27日 01時10分40秒 | 法律問題
ホームセンターに行きますと,どこでも「梅酒セット」が売られています。実際,多くのご家庭で梅酒を作られているのではないでしょうか。
さて,完成した梅酒ですが,これまでは「自己消費目的のみ酒類の免許がなくても良い」と国税庁の見解を示していましたが,今回,これまで不明確であったエリアである「無償譲渡に限り無免許でよい」という公式見解を示しました。

自家製果実酒、おすそわけは合法 政府が基準を明確化(朝日新聞) - goo ニュース

安心して自分で作った梅酒をみんなに分けてあげましょう。

そもそも,この問題,ほとんどの方が問題意識を持っていなかったと思います。現に,「自家製梅酒」を平気で隣近所や知人に分けていた方もいるのではないでしょうか。
ところが,この行為,「酒税法」に抵触する可能性があったのです。
そもそも,酒税法によると,「酒を造った者」に対し課税されます。そして,このような酒を作る為には,確実な課税を図るため,免許制度としていたのです。したがって,自家製梅酒やどぶろくなども本来は「免許を取得」しなければなりませんでした。
しかし,それはあまりに杓子定規すぎるということから,「自己消費目的」で果実酒を造った場合は,例外的に免許は不要としました。6/28追記:この部分,誤解を招く表現となりましたので補足しますと,あくまでも現在免許不要なのは果実酒,いわゆる「梅酒」を作ることのみで,米から作る「どぶろく」は,例え自己消費目的であっても無免許で作ることは認められていません。)。
したがって,作ったお酒を他人にあげることは,「自己消費目的」ではないということから,原則に戻って免許が必要なのではないかという議論が長年続いていました。
今回,国税庁は,「果実酒については無償譲渡のみ免許はいらない」としました。いわば,社会的儀礼と思われる範囲内のことについては,免許はいらないし,課税対象にもしないとしたわけです。
したがって,自家製梅酒,無料なら安心して人にあげられるようになったのです。

ただし,米から作ったいわゆる「どぶろく」や「有償譲渡」については,原則に戻り「課税対象」となり,「免許が必要」となります。
そのため,もし知り合いの方からお裾分けで自家製梅酒を頂いた場合,気を使って金一封を渡すことは,有償譲渡となるため,かえってその方に迷惑をかけてしまうことになります。金銭でなくても,総統の対価と思われるものを渡すことは,有償譲渡とみなされてしまいます。
よって,不義理かもしれませんが,一言「ありがとう」だけ伝えるのがベストな方法なのです。

世の中には,まだまだ意外なところで税金が発生します。
ちなみに,東急ハンズなどで売っている「自家製ビール」ですが,これは果実酒ではないことから厳密には課税対象になるかもしれません。念のため注意しておきましょう。
(6/28補足:自家製ビールについては,アルコール分1%を超えるものを作ると酒税法違反になるそうです。要するに「薄いビール」しか作れないということです。)。

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少年よ,悪さするベカラズ

2007年04月19日 00時31分47秒 | 法律問題
少年法改正案が衆議院を通過しました。主な改正点としては,少年院送致年齢が12歳まで引き下げられたこと,また14歳未満に対する強制捜査も可能となることなどです。

少年法改正案成立へ、強制調査「14歳未満」も対象(読売新聞) - goo ニュース

厳罰化だけど,警察も動きやすくなる

この問題,国会は専ら「厳罰化反対」が大きな争点となり駆け引きが続いていました。
しかし,少年犯罪が多発ししかも低年齢化していること,また少年院はあくまでも「教育施設」であること,諸外国では小学生でも刑務所に入れる場合すらあることを踏まえると,少年院送致を12歳まで引き下げることは私は賛成できます。
もちろん,少年院内部でもプログラムは見直す必要があるでしょう。特に「更生可能性」はもちろんのこと,「基本的な躾やマナー」などがなっていない子供が多いと思われることから,こういう点を重点的に指導するようなプログラムにする必要があるといえます。
いわば,「少年院が本当に親代わりになる」といえるでしょうか。
もっといえば,低年齢で犯罪を犯す少年の多くは,「親がまともに躾をしていない」場合が多いです。だからこそ,少年院で厳しく躾を学ばせることが,社会に出てからまともな人間として再出発が可能になるといえるのではないでしょうか。

また,警察の強制捜査権ですが,この点は,実は知らない方が多かったのではないでしょうか。
実は,現在の法律では,「14歳未満の少年犯罪の場合,逮捕はもちろん,令状を使っての家宅捜索もできない」のです。なぜなら,刑法では「14歳未満は罰しない」と規定している以上,14歳未満に対する強制捜査ができない,ということになるのです。
ところが,先の長崎の児童殺傷事件などの際に,これが警察の捜査の大きな足かせになってしまいました。結局,逮捕はもちろん,ガサもできない以上,すべて任意で対応するしかないのです。となると,親に拒否されたらそれ以上の捜査は困難になってしまうのです。
しかし,それが本当に真実発見に妥当なのか,またその少年の更生のための資料が集まるのか,大いに疑問がありました。
そこで,今回は警察に一定の強制捜査権を認めたのです。
これは,濫用さえしなければ,非常に有用なツールになると思います。

ただ,究極は,「少年犯罪を0にすること」です。
厳罰化はもちろん重要ですが,同時に少年犯罪を抑制する手法も引き続き積極的に議論をしてほしいものです。

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住基ネット,住基ネット,夢の住基ネットかな?

2006年12月12日 00時51分51秒 | 法律問題
先日大阪高裁で違憲判決が出ましたが,名古屋高裁金沢支部では1審の違憲判決を否定し,住基ネットは合法であるとの判決を下しました。

住基ネット2審は合憲 住民側が逆転敗訴(共同通信) - goo ニュース

いよいよ最高裁判断ですね

さて,最高裁がどんな判断を下すでしょうか。これがいよいよ住基ネットに対する最終的な判断となります。
ところで,今回の大阪高裁と名古屋高裁,判断がどのように割れたのでしょうか。
判決文を詳しく読んでいませんので,正確性を欠きますが,私なりに両判決をごく簡単に比較すると次のとおりになると考えました。

第1 大阪高裁(違憲判決)
1 住民の同意を得ないで住民情報を登録されるのはプライバシーの侵害である(データマッチングなど勝手な二次利用の可能性が否定できない。)。
2 住基ネットはシステム上プライバシーやセキュリティーが完璧であるとは言えない。
3 人的エラーや情報漏洩のおそれは否定できない。

第2 名古屋高裁金沢支部(合憲判決)
1 住民情報の登録は,行政事務上当然に必要であり,同意なくてもプライバシー侵害にはならない。
2 住基ネットのセキュリティに問題があるとは言えない。
3 住基ネットは公務員しか触らないが,法律で厳しく縛っているため不正行為はしないため,情報流出は想定できない。


以上になるでしょうか。
すなわち,大阪高裁は「システム疑心暗鬼論+公務員悪人説」に立っているのに対し,名古屋高裁は「システム万能論+公務員善人説」に立っていると言えます。
もちろん,判決はもっと詳細に検証しているため,こんな乱暴な一言で片づけられるものではありませんが,両高裁の裁判官の思想(正確には裁判上現れた主張と証拠)には,それぞれこのような内容のものであったと推測されます。

最高裁では,このあたりが中心争点となるでしょう。もう少しいえば,次のとおりです。
1 住民情報のプライバシー権と行政事務における住民情報管理権との優劣
2 住基ネット政策の違憲性(1の関連で)
3 住基ネットの安全性(事実認定が割れているため,この部分については最高裁として法律判断できないとして高裁差し戻しの可能性がある)
4 情報管理者たる公務員の制約の妥当性(現行法の縛りで十分か否か)


いずれにせよ,この問題,もう少し時間がかかりそうですね。

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後見人は,気楽な稼業と,いえません!

2006年10月28日 23時00分24秒 | 法律問題
孫の未成年後見人であった祖母が孫の貯金を流用したとして逮捕起訴された裁判で,福島地裁は,この祖母に対し,業務上横領罪が適用されるとして,有罪判決(執行猶予)を下しました。
また,秋田地裁でも,叔母の成年後見人をしていた人が叔母の貯金を着服したとして逮捕起訴された裁判で,同じく有罪判決(実刑)を下しました。
いずれの裁判でも,「親族相盗」は適用されないとして,厳しい判決となりました。

孫の貯金流用した後見人の祖母、刑の免除せず 福島地裁(朝日新聞) - goo ニュース

後見人の責任は大きいです

今は障害者自立支援法の影響で後見人が必要となった人が急増したことや,高齢者社会のあおりを受け,また悪徳商法が多様化していることも加わり,成年後見制度の利用率が高くなっています。そして,半分以上は親族が後見人を務めています。
ところが,後見人になると財産管理を業務として行わなければならないところ,親族(特に親子)の場合,もともとしっかりと財産管理をしていなかったことから,この財産管理がかなりいい加減になっているケースが多いようです。
また,後見人になりますと,例え親子であっても,本人の財産状況の報告を毎年家庭裁判所にすることになります。今回の事例も,この報告の中から使い込みが発覚し,裁判所が警察に告発して逮捕されたということになっています。

このように,後見制度の注目が高い一方で,実際後見人が何をやるのかは意外と知られていません。逆に,「銀行からいわれたから」位の軽い気持ちで後見人になろうとしている方の方が多いのではないでしょうか。
しかし,後見人は例え親族であったも,「人の財産を管理する」重大な業務です。難しい言葉で言うと,「善管注意義務」があります。つまり,「自分の財産よりも大切に扱いなさい」という責任を後見人は負っていることになります。
さらに,後見人の業務は,本人が死ぬまで続くロングラン業務です。銀行の書類に判子押して終了,という訳にはいきません。
成年後見制度を活用しようとお考えの際は,その後の長期間にわたる業務と責任を十分理解したうえで申立をした方がいいでしょう。もちろん,親子兄弟であったとしても,後見人になった以上,勝手に本人の財産を使うことはできません。勝手に使うと,冒頭の通り「逮捕」されます。

なお,そんな責任はとても負えないが,後見制度で保護する必要がある,と思う場合は,司法書士に相談してみるといいでしょう。最近の司法書士は,成年後見を専門にしている方もだいぶ増えてきており,親身になって相談に応じてくれるはずです。ただし,登記しかできない司法書士もいますので,その点はよーく確認してみましょう。

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