伊吹有喜さんの「雲を紡ぐ」を読みました。東京の家電メーカーの研究所に勤めている夫の広志、私立中学の英語教師をしている妻の真紀、私立の名門高校に通う娘の美緒の3人家族を取り巻く、一家の物語です。娘の美緒は高2の初夏から学校に通えなくなり、赤いホームスパンの羊毛のショールをかぶり部屋に引きこもる毎日だった。娘が留年することを恐れ、なんとか高校へ復帰させたいと迫る母親の真紀は、ある日、美緒が片時も離さず大切にしていた赤いショールを取り上げてしまう。そのショールは美緒が生まれて初宮詣りの時に、父の広志の母親が自ら糸を紡ぎ、機で織りあげて作った高級羊毛のショールだった。美緒は、人の気分を害することを気にして、いつも笑顔を浮かべている内気な少女だった。顔に張り付いたようになっている曖昧な笑顔が原因でクラスメートからからかわれたり、変なあだ名で呼ばれたりするようになったのだった。美緒は家族にも自分の気持ちをうまく言葉にすることができない少女で、母親にも父親にも気持ちを伝えられなかった。しかし、赤いショールを取り上げられたことをきっかけに、美緒は父の故郷の岩手県でホームスパンの生地を作る山崎工藝社を営む祖父の家に1人向かった。そこで、彼女は、本当に自分がやりたいと思うことを見つけ、将来への道筋を見出すのだった。壊れかけた家族関係、夫婦関係、親子関係などを描いて、良い作品と思いました。家族との関係を紡ぎなおす話。「雲を紡ぐ」というタイトルの意味は本を読むとわかります。お薦めです。
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