トドの小部屋

写真付き日記帳です。旅行記、本や美術展の紹介、俳句など好きなことをつれづれに。お気軽にどうぞ。

ツリーハウス

2015-03-15 16:08:31 | 
角田光代さんのツリーハウスを読み終わりました。物語は藤代良嗣が二つの事件を目撃した日から始まる。一つ目の事件は、同居していた祖父、泰造の死を一人で看取ってしまったこと。もう一つは新宿でバスがハイジャックされたのをテレビで見たことだった。新宿西口で中華料理屋、翡翠飯店を営む藤代家はその日は定休日で、家の中には良嗣しかいなかった。家族みんなが勝手に出歩いていたため、良嗣はみんなの出先に出向き、家族をかき集めたのだった。バタバタと祖父の葬儀は終わったが、祖母ヤエが「帰りたい」と口にする。どこに帰りたいのか、昔、祖父と知り合った満州に帰りたいのか?藤代家は根無し草のような一家だと良嗣は思う。死亡保険金の受取の手続きのため、祖父の戸籍を見たとき、知らない名前がたくさん見つかり、長男だと思ってた父、慎之輔は三男だった。祖父母も両親も昔の話は一切しなかったし、墓もどこにあるのかわからない。親戚もいない。藤代家のルールは、他の家とはまったく違う。知らない人がふらっとやってきて寄宿しても受け入れる。兄の基樹が外国に行き、風来坊のようになっても反対も心配もぜず、物心ついたときから叔父の大二郎は、仕事もせずにブラブラしているが、それも問題にしない。それでも翡翠飯店はそれなりに繁盛していたので、お金はなくても昔から食べ物には困らない一家だった。仕事を辞めて家にいた良嗣が初めて自分からしたいと思ったこと、それは藤代家のルーツを探ることだった。良嗣は祖母を連れて満州へ行くことにする。万一に備えて叔父、大二郎をお供に。NHKのファミリーヒストリーを見ているように、興味深い家族の歴史物語が展開する。お薦めです。
コメント
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