宮尾登美子さんの「鬼龍院花子の生涯」を読みました。故夏目雅子さん(松恵役)の主演で有名になった映画「鬼龍院花子の生涯」がありますが、映画と原作はかなり違うようです。小説の松恵は地味で忍耐の女性で、全然姉御肌ではなく、有名な「なめたらあかんぜよ」というセリフを言う場面はありません。政五郎に手籠めにされそうになる場面はありますが、辛くも逃げおおせます。鬼龍院政五郎は、本妻の歌と3人の妾を向い合せの家に住まわせ、食堂を営む白井家から子供の頃、奪い去るようにもらわれてきた松恵は、養女とは名ばかりの下働きの女中のような扱いを受ける。歌に遠慮しながら、女学校へ行かせてもらい、小学校教師の仕事につき、家から離れて自活を始めるも、養父、政五郎が宿敵、荒磯と抗争をおこし、実刑に服することになり、やむなく教職を辞して、また高知の鬼龍院一家に戻る。腸チフスにかかった養母、歌の看病をし、自分も腸チフスにかかったり、散々な目に合わされる。政五郎は8年の刑を模範囚として勤め上げ、6年で釈放されるが、帰宅後、脳溢血であっけなく死んでしまう。花子の母親で妾のつるも、娘の花子も一家をまとめる器量はなく、鬼龍院一家はどんどん凋落していく。松恵自身も最初にプロポーズされた労働運動家の安芸盛との中を政五郎によって引き裂かれ、その後、田辺恭介という男性と愛し合うようになるが、田辺の両親からの理不尽な反対で、妻にはなれず、入籍しないまま、夫と死別。それでも、戦後は服飾学院の教師の職を得て、自活を始める。50歳代になってやっと鬼龍院一家と縁がきれ、平穏な暮らしをしていた松恵のもとに、花子が困窮しているから助けてやってほしいとつぎから連絡があり、花子とどうしようもないやくざな息子、寛が転がり込んでくるはめに。蝶よ花よで育てられ、子供大人だった花子が、最後は、旅館の住み込み女中の仕事を1年続けられ、やっと自立し始めた。甘やかされて育った花子は寛に親らしい躾をすることもできなかったが、傷害事件をおこして3年の刑に服していた寛に面会するのを楽しみにしていたのだった。松恵は最後まで鬼龍院一家を見守り続けた人生でした。そこそこお薦めというところか。
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