1
則天去私。
私を去って天に則(したが)う。
2
そうはなれない。なれないから、そうなりたいと思う。
3
私の幸福も私の不幸も私を拘束しないですむはずである。そのためには、天に一任をしてしまうといいだろう。そうすればもっと心軽く、軽やかにしていられるだろう。
4
ところがそうはならない。不平を言う。不満を垂らす。心配する。恐怖する。わがことわがことのみになっている。
5
ちょっとしたことで浮かれる。浮き足立つ。そしてまもなくその分を落ちてくる。あえなく沈んでくる。それがまたため息になる。
6
それはそれでいいではないか。そういう現実の己の醜いさもしい姿は紛らすことができない。しかし、則うべき天がそこにある。あるというだけで、それでいいではないか。
7
秋空が青く澄み渡って高い。己は小心者の己にしがみついて離れようとはしない。浮かれて沈む。笑って泣く。躓く。立ち上がる。
8
頭上に青空が広がって無限の智慧を指し示している。天にそれがある。これでいい。