麦の種、粟の種、小豆の種、蕎麦の種も五升蒔いたら一斗が実る。我が蒔く悪の種もこうである。恐ろしい。倍にも倍々にもなって返って来る。人の蒔く善の種もこうである。倍にも倍々にもなって返って来る。そのうちの五合の善をお借りする。こちらの手元にはないのだから、しようがない。借りたらのちのち返さねばならない。倍額の一升の善を返すとなるとタイヘンである。手に負えるものではない。口がする悪、目がする悪、肌がする悪、こころがする悪。とめどがない。三悪道に堕ちて刑罰を受けるしかない。仏の極楽浄土へは到底行けそうはないようだ。
自力では業のカルマを抜けられそうもない。どうやっても。ではどうすればいいか。虫が良すぎるが仏の力を頼むしかない。懺悔懺悔するしかない。ギブアップするしかない。降参の白幡を揚げる。悪の借金地獄を免れて行くべき他の方法が見つからない。