汝(なんじ)よ、(汝の)道力を以てこの天人衆を擁護すべし。また無上(道)を漸修せしめて退出させること勿れ。復(また)次に地蔵よ、未来世の中において、若しくは天の人であれ地の人であれ、業報に随(したが)って、応(まさ)に悪趣に落ちて在りて、(悪)趣の中に臨堕し、或いは門首に至らんとせんに、是の諸々の衆生、若し能(よ)く念じて、一仏名や一菩薩名や、一句一偈の大乗経典を得れば、汝(なんじ)は(汝の)神力を以て、方便もてこの諸々の種々をば救抜(くばつ)すべし。この人のいます所に於いて、無辺身を現して、この人の為に地獄を砕き、遣わして天に生まれ令(し)め、勝妙の楽を受けしむるべし。 地蔵菩薩本願経属累品より一部抜粋
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ここの「汝」はお地蔵さまである。地蔵様に話をされているのはお釈迦様である。天人というのは天界の人と人界(地の界)の人のことである。お釈迦様が地蔵様に向って、「未来世の天・人の衆をあなたにお頼みいたします」と委嘱をしているところである。
1,地蔵よ、あなたの道力でもってこの人たちを擁護してくださいよ。2、この人たちに無上道(=仏道)を漸修させてくださいよ。3,この人たちを無上道(=仏道)から退出させてはいけませんよ。4,この人たちが、生前の報いによって悪趣(悪世界 地獄・餓鬼・畜生界)に堕ちて刑を受けようとしていたら、あなたの神力で以て救い出してくださいね。5,たとい悪趣界の何処に居ても変化身(へんげしん)を現して、地獄を粉砕してあげてください。6,この人たちを天界に生まれさせてください。7,天界では、どうか、勝妙の楽を受けさせてください。8,こうすればこの人たちは仏の名や菩薩の名を称えてくれるようになるでしょう。9,助かった人たちは大乗経典の一句、一偈を称えてくれるようになるでしょう。10,地蔵菩薩よ、あなたにこの未来世を生きて行く人たちのことをお頼みします。お頼みします。
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お釈迦様は地蔵菩薩に諄いほど私たちのことを何度もことこまやかにお頼みをしておられます。これが経典です。全篇にわたってお願いをしておられます。
願いは成就されているので、わたしたちは擁護されています。いまここで救済されています。お釈迦様と地蔵菩薩の約束事なので、約束に背いてはおられません。これを経典に遺しておいてわたしたちに安心を届けておられます。仏さまにこれほどまでに一方的に頼まれているわたしたちです。そういうわたしたちを私たちはここで生きています。