午後になって日が射してきた。それにつれて気温も上がってきた。長袖はさすがに暑くなった。脱ぎ捨てる。昼ご飯がまだだ。喰うのが面倒臭い。でも、腹が空(す)く。
魂(soul ・spirit)の腹はどうか。空(す)いていないか。わが魂の腹の空きには何を食べさせたらいいか。肉体の腹は日に三度の食事で満たされていくが、魂のそれはどうか。
孤独氏にも空き腹がある。空き腹していれば、これもしきりにさみしがる。恋しがる。あたたまりたがる。異性の肌に触れてやればおとなしくなるはずだが、老人さぶろうにはそういう解消法はない。可哀想に。
腹が二つも三つもあって面倒だ。しかし、喰わせてやらねばさっそくひもじがる。魂氏には妙法蓮華経がある。これをちぎりちぎりして食べさせてやる。そうすると彼は昼寝をしてくれる。
性の空腹氏には打つ手がない。性は生のエネルギーと二人三脚をしているところがある。無視はできないが、方策はない。仕方があるまい。この高齢だから。百人一首の恋の巻を捲って見せてやる。疑似体験をさせて騙し騙し黙らせる。これが精一杯の奉仕作業だ。
さてと、そろそろ肉体の空腹氏へお膳を運んで来てやるとするか。パンがあったようだ。