知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

発明の容易想到性を判断する前提としての発明の要旨認定

2012-09-04 23:17:49 | 特許法その他
事件番号  平成23(行ケ)10317
事件名  審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年08月30日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 芝田俊文、裁判官 岡本岳,武宮英子
特許法70条1項、特許法70条2項、特許法29条2項

 発明の容易想到性を判断する前提としての発明の要旨認定は,原則として特許請求の範囲の記載に基づいてされなければならないところ,その用語は,その有する普通の意味で使用し,かつ,明細書及び特許請求の範囲全体を通じて統一して使用しなければならない(特許法施行規則24条の4様式第29の2)。

 本件審決は,「嵌着」の意味を,広辞苑に記載された「嵌める」の意味とともに,訂正請求2による訂正後の明細書(以下,「訂正後明細書」という。甲54の2)段落【0033】の記載を参酌して,「くぼみに入れて固定し着ける」ことを意味すると解釈したものであるが,その解釈の方法は,「嵌着」の用語が「嵌めて着ける」ことを意味することは文言上明らかであるところ,同文言上の意味が上記段落【0033】から読み取れる「嵌着」の意味「くぼみに入れて固定し着ける」と整合することを確認したものと理解することができ,妥当なものというべきである。
 そして,甲13の3,4及び甲17の3,4には,内部の骨格に外皮を単に被せる構成しか開示されていないから,原告の主張は理由がない。


特許法施行規則24条の4
第二十四条の四  願書に添付すべき特許請求の範囲は、様式第二十九の二により作成しなければならない。

「会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」53条の適用

2012-09-04 22:59:05 | Weblog
事件番号  平成24(ネ)10026
事件名  特許を受ける権利出願人変更 請求控訴,同附帯控訴事件
裁判年月日 平成24年08月28日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 芝田俊文、裁判官 岡本岳,武宮英子

上告審(最高裁判所平成22年(受)第1340号)判決は,本件は,控訴人とその取締役であった被控訴人との間の訴えであるが,控訴人は,「会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」施行の際,現に,その定款に株式譲渡制限の定めがあり,また,資本の額が1億円以下であったから,同法施行の際の最終の貸借対照表の負債の部に計上した金額の合計額が200億円以上であった場合を除き,同法53条の適用により監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがあるとみなされることとなり,上記の定款の定めがあるとみなされる場合には,監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定しないこととする旨の定款変更がされ,又は株主総会若しくは取締役会において取締役であった者との間の訴えについて代表取締役以外の者が控訴人を代表者と定められていない限り,本件訴えについて控訴人を代表するのは代表取締役のAというべきである旨判示し,上記第2審判決を破棄し,Aの代表権の有無を含め,更に審理を尽くさせるため,事件を知的財産高等裁判所に差し戻した。
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第3 当裁判所の判断
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2 また,本件全記録を精査しても,本件訴えについて,控訴人を代表する者を,控訴人の代表取締役であるA以外の者とすべき事情は認められない。